危険なアネキ
2005年12月27日 00:20 | コメント (0) | トラックバック (0)
基本情報
公式ページ フジテレビ系列:月曜21時
美人だがのほほんと無邪気すぎる姉・寛子と、そんな姉に振り回される弟・勇太郎のドタバタを描いたコメディ。家業の酒蔵が倒産し、父親を亡くした上に借金を背負った寛子は、研修医として医大に通う弟の家にころがりこんできた.... 出演は伊東美咲・森山未來・高嶋政伸・釈由美子・濱田マリほか。
公式ページトップの画像、主演の伊東美咲・森山未來両名ともヘンな顔で写ってるけど、事務所的にあれはオッケーなのか。
概観
1話で描いたノリをずっと進めて欲しかった。全体的に「アネキはさほど危険ではなく、どこまで行っても素直ないいコであり、間違っているのは複雑で小難しい周囲」という流れになってしまっており、その「小難しい周囲」の役を一手に引き受けていた弟くんがあまりに不憫だった。
10もエピソードがあるんだから、1つや2つくらいアネキの真っ直ぐさで解決できずに反省する....文字通り危険なアネキなエピソード.....があっても良かったのではないだろうか。
また、かつて姉弟を捨てたという母親が登場するも、その理由や、母親がいなかった事が弟くん(の少年時代と現在に)にどんな影響を与えたかには全くと言っていいほど触れられない始末。そのうえドラマ全体から「弟くん、意地張ってないでお母さん許してやれよ」包囲網に取り囲まれ、ますます肩身の狭いことに。つか、ここまで描写不足になるなら母親なんて出すなよと思う。
弟くんは、いなくなってしまった母親、無邪気すぎる姉という2人の為に、早く大人にならざるを得なかったのだが、劇中でそれがうまく描かれることはなく、ひたすら頭が固く融通の利かない人間になってしまっていた。
第1話
大げさな展開をテンポよく見せるマンガ的展開がうまく決まっていた。アネキは破天荒でトラブルメーカーだが、悪気が無い事を言い訳に際限なく迷惑をかけるパターンではなく、底抜けな無邪気さを嫌味なく見せることにも成功していた。
「顔が良ければなんでもありか。(勉強が)できないじゃない、やらなかっただけだろ。勘違いするなよ」という勇太郎の言葉が、彼の、姉に対する気持ちを象徴しているのだろう。外野から見れば「優しくていいお姉さんじゃない」と魅力に映る部分も、彼からすればイラつく一面なのかも。
普通の家族モノなら終盤に描かれるであろう、相手の真意を垣間みて歩み寄る展開が早くも1話で登場。実際のところ、血のつながりというか、姉弟として最も近くで長い間生活してできた溝がこんなあっさりと埋まる(完全に埋まった訳ではないが)のは無理があるのだが、そういう事言う作品じゃないし。
わははと笑えて、伊東美咲が可愛いくて、それに振り回される森山未來もなんだか可愛い。今後も素直にそれを前面に押し出していって欲しい。
第2話
絵に描いたようなエリート指向 & 思考な弟と、素朴で健気な姉。お約束と言うにもほどがあるベタなお話が展開された。まあ、それについてはどうでもいいのだが、弟が研修医であるという設定を聞いて心配していた展開が第2話ではやくも登場。
長く生きるのと、延命を犠牲にしてやりたい事をするのではどっちが正しいのだろう.....死期の迫った患者の生き方にその選択肢が存在するのは確かだが、今回の状況でこのテーマを語ろうとは、とんだお笑いぐさだ。
この究極の二択を迫られるのは「どちらかを犠牲にしないともう一方を得られない」という条件が大前提だ。延命治療による薬の副作用で頭がボーっとして小説が書けなくなるとか、病院のベッドにいてはライフワークにしていた山の写真が撮れないとか、そういう事だ。
ここで勘違いされると困るのだが「今回の話は、命を削ってまでやりたい高尚な目標が無いからダメだ」と言いたいのではない。
治療を拒否する理由が「投薬されたら手の感覚が無くなって、ねーちゃんのケツ撫でても気持ちよくないからよぅ」であろうと構わない。要は本人にとって一般的に最優先とされる「延命」よりも大切な、かつ、そのためには治療を諦めなければいけない事情があったかどうかが問題なのだ。
命を削ってでもキャバクラに行ってアネキに会いたかった。それは事実だろう。しかし、それは、(何も考えていないオヤジの)行動の結果としてそうなっているだけであって、命を削らなければ.....延命処置を拒否しなければ.....実現不可能な事ではない。会いたい人間が分かっているならその人物を病院に呼べばいいし、それがどうしても無理なら体調を見極め、医者が付き添って許容できる時間内で相手方に会いに行ってもいい。
予定されていた延命治療が、ICU から一歩も外に出る事も叶わず、目の前にいる人物が誰なのかさえも分からないほど意識が朦朧とする強い薬を使うというのならまだわかるが、弟クンのセリフから察するにとてもそこまでの処置ではないだろう。
つまり、今回のエピソードにおいて「長く生きる」と「(娘に似ているという)女の子に会って一緒に歌をうたう」という選択肢は、同じシーソーの上に乗っていないのだ。
「延命」と「小説の執筆」だったり、「山の写真」だったり、「ねーちゃんのケツ」だったり。それらが同じシーソーの上に乗っていて、どちらか一方を選べば他方を得る事ができない状況があって初めて「延命ではない、もう一方の選択肢を選ぶ患者の意思を尊重すべきかどうか」という問題・葛藤が生まれる。
「最後にやりたい事ができた」と言って死んでいったオヤジさんが幸せだったのも、また事実だろう。しかし繰り返しになるが、それは延命治療を拒否しなければ得られなかった幸せではない。
この状況で医者として考えなくてはならないのは「延命治療と患者さんのやりたい事のどっちを優先すべき」なんていう根本的な問題(かつ、フィクションとして客の興味を惹くキャッチーなフレーズ)ではなく、「患者さんのやりたい事に目を向け、それを実現しようとする事も重要」という、もっと具体的な事柄なのだ。(ミもフタもなく言ってしまえば、それは心云々というより技術的な問題とさえ言える)
死期の近い患者・心のふれあい・治療よりも大切なこと.......「定番キーワードをちりばめとけば感動するっしょ」という制作者の顔が透けて見えるようなエピソードだった。それを描くに足る舞台と状況が用意できないなら、つっこんだテーマには手を出さない方が無難だ。
第3話
理事会に乗り込んで堂々と啖呵をきるアネキ。実際に理事会の決定を覆したのは署名や患者の声、同僚医師によるそれまで優れた勤務評価であって、アネキの行動はさほど関係が無い。
アネキのバカ正直な行動だけで理事会の決定が覆っても興ざめだし、理詰めで描こうとするとアネキが活躍できない。今回の展開は、ストーリーにそれなりの説得力を持たせ、なおかつ策を弄したりせず素直で真っ直ぐなアネキを気持ちよく描くという、よく出来た構図だった。
「キャバクラでバイトしてる」という噂を広めたのも入院患者たちだと思うのだが、解雇処分は厳しすぎるってこと? それとも、単純に噂を面白おかしく広めた連中と、プラカードを掲げていた連中は別って事?
院内の雰囲気が悪くなった描写が多々あったのだから、プラカードを持っている連中と同じくらい「辞めるべき」と思っている人もいるのでは。また、イヤミなボンボン研修医が改心するきっかけが軽すぎる。.....などつっこみ所は多々あるが、今回のキモは前述のアネキの行動である事を考えれば、それらに目をつぶってしまうのもまあアリだろう。
第4話
恋の相談で相手を勘違いて、いつの時代だよ。う〜ん、1話からそうだと言ってしまえばそれまでだが、姉の能天気さをプラスに見せる為のマイナスを弟クンがひとりかぶる構図はどうにかならないだろうか。「愛ちゃんは告白できたんだね、よかった」という姉の言葉に対して「人の不幸を喜ぶんですか」と反応する弟はイジけ根性に溢れ過ぎ。(それ以前に頭が悪そうだ)
前回の「会議に乱入してキャバクラ嬢で悪いかと啖呵を切る」という真っ直ぐさは心地よいレベルだったが、夜中に街宣カーに乗って大騒ぎしながら人を捜す今回の行動は行き過ぎでサムい。
和解しようとした矢先、反省した相手が身を引いてしまうというのはとことん定番だが、そこで次回に引くからにはそれなりの展開を見せてくれるのだろうか。
第5話
前回「それなりの展開を見せてくれるのだろうか」と書いた、若干しんみりとしたアネキの帰郷は単にミスコンに出場しただけというオチ。そうくるか。
「ウラオモテ激しく好き放題しまくり悪態つきまくりの子供が、健気で寂しげな一面を見せてホロリ」というおなじみのパターン。
相変わらず泣かせる為の悪者役を一手に引き受けている弟クン。能天気なアネキに容赦なくツッコミを入れる役は彼にしかできないので仕方ないが、(多少考えれば事情が想像できる)小さな女の子をいじめさせなくても。まあ、脚本的には父親を空港に連れてきたことで帳消しって扱いなんだろが。
ところで、アネキは昔から今と変わらぬ性格らしいが、弟クンはこれまでのエピソードで描かれた程度の「アネキの活躍(良さ)」を目にしたことは無かったのだろうか。周囲の人間も未熟で、イベントの多い学生時代ともなれば、良い意味でも悪い意味でも大暴れするアネキの魅力は、今以上に見る機会があるような気がする。それでもなおアネキを嫌うからには、少々のプラスを打ち消すマイナスを目の当たりにしてきたのだと思うが、肝心のアネキは純真無垢でただただ素直、しかも耐える女としか描かれていない。
現状では、危険なアネキ.....振り回される弟とやりたい放題だけど憎めない姉.....でもなんでもなく、ただただ素直じゃない弟クンどーにかせーよ物語になってしまっている。
第6話
弟クンが素直になるきっかけが、よりによって「アネキってばガンで余命数ヶ月らしい」ときた。しかも弟クンに「オレにやって欲しい事ない?」と聞かれて「チキン南蛮食べたら死んでもいい」だってさ。そのうえ、借金返済に奮闘する女性として TV 出演した際のビデオを観て弟クン涙するの巻ですよ。くだらねー。
第7話
「味を守る vs 商業主義」の超ベタ路線。酒蔵をメインに扱った作品ではないのでそのあたりがナァナァでも構わないのだが、せめてアネキには新しい「みながわ」を飲み、味の違いを実感した上でちゃぶ台返しをして欲しかったところ。(高嶋政伸はしっかりそうやってんのに)
「みながわの味は守るって約束だったのに話が違う」なら分かるが、ポヤポヤと頭からっぽで契約しておいて、期待したものと違うからドタキャンってのはどうなんだろう。そもそも、今も酒蔵で作り続けているものを全国販売したいという申し出ならまだしも、すでに生産が終了してしまっているものを新たに作って売り出すというのなら、その生産体制は最優先で確認すべき事じゃないだろうか。
祝杯をあげようと用意した酒の中身を取り替え、鶴見辰吾演じる実業家に「(あなたが売ろうとする酒の)中身が違う事に気づかなかった」と言う弟クンだが、味にうるさい経営者が惚れ込んで取引するという以外はごく普通に引っかかるだろ。つか、自分だって分からないだろうに。(いやま、そもそも一度も飲んだ事無いって設定だ)このあたりはアネキも含めて味へのこだわりを描いてこなかったゆえの薄っぺらさを感じた。
このあたりは気になってしまったが、アネキが社長に文句を言ったり、発表会を自らぶち壊すといった事をせず「なんかイヤ、だからゴメンナサイ」という素直な反応を示したところは良かったと思う。ポヤポヤと契約してパヤパヤと破棄して、さすがにそれが悪い事だってのは分かるからゴメンナサイ。幼稚と言えばあまりにも幼稚だが、底抜けに真っ直ぐという意味では筋が通っていると言えなくもない。
第8話
前回のドタキャンで「みながわ」再生計画は頓挫したかと思ったのだが、鶴見辰吾とパートナー関係を解消しただけらしい。資金とかどうしてんだろ。すでに3000万円もの借金があり、返済能力も怪しげな人物に融資してくれる銀行などあるのだろうか。それとも不動産などの資産はある?
母親あらわるの巻.....ってこれまでに輪ぁかけて「アネキ=無垢で良い人 / 弟=気難しいひねくれ者」って構図じゃないか。しかも、アネキはいつも通りの真っ直ぐさで何のためらいもなく母親を受け入れるわ、母親は自分が犯した罪をきっちり自覚しているわと完璧な包囲網。
このテの親子再会モノが嫌いであることを踏まえ、つとめて冷静に見ても描写が足りないと言わざるをえない。過去はもちろん現在の心情すらもさほど描かれず、見飽きたような定番のやりとりがいくつかあってなんとなく和解。なんだそら。
弟くんがアネキに言った「アネキが母親の代わりするの、オレは嫌だったよ」には、実に様々な思いが込められているのだろう。具体例が何ひとつ描かれていないので勝手に想像するしかないが、恥ずかしかったり、悲しかったり、腹が立ったり、くやしかったり、情けなかったり、それら全てを忘れてしまいたかったり、そんないろいろな「嫌」が入っているような気がする。そんな彼への積極的なフォローはもちろん、その心情を理解しようとする展開さえなし。
病院の屋上で医院長だかが語った言葉は、耳ざわりの良い理想論としてはごく正しいものだろう。しかし、弟くんが母親を知らず過ごしてきたこれまでの気持ちを包んだ上で、その気持ち全てを受け止める覚悟をした上で言わない限りでっけぇお世話って気がする。
まあ、このドラマに限らず、一般的価値観からいくとあそこで許す方が正しいとされているので、これはこれでアリなんだろう。
ラスト、空の封筒を見てアネキは真っ先に母親を疑ったってこと? 無邪気に母親を受け入れもするが、疑う時も素直に疑うって事だろうか。見方を変えれば純粋と言えなくもないが、いつも通りヤな部分は弟くんに頼んで「勇太郎〜、泥棒が入って旅行用のお金をとっていっちゃったの〜」「何言ってんだよ、あいつが持っていったに決まってんだろ」「あいつって?」「か....あいつだよ!」とかいうやりとりにした方が良かったのでは。
第9話
「あなたの言いたいことは了解しました、それなら僕の言いたいことも了解してくださいね」的なクールなガンコさをもつ弟くんが選んだアネキとの訣別。物語がもちっと弟くん寄りに来ていればまだしも、これまでとことんアネキ寄りだったので、やっぱりなんだか弟くんが悪者のよう。
ただ、それにしたって病院を辞めるってのは違う気がする。医者になる事はアネキも母親も関係なく弟くん自身の夢であり、病院(勤務)ってのはむしろアネキを忘れることができる空間じゃないだろうか。ただ単純に、アネキに引っ掻き回されるのがイヤというのなら「病院の仕事に逃げ込む」という選択の方が納得できる。
最終話(第10話)
あの病院を辞めただけで、別の場所で医者は続ける弟くん。病院を辞めるって行動が多少強引な気もするがこれならアリか。アネキに「病院には来ないで」と言い聞かせる気力さえ無くなったって事なんだろう。
「何があっても弟を信じる」を地で行っているアネキによる「いつか信じてもらえればいい、姉弟の絆は絶対に壊れないから」といった弁はアリだと思うが、先輩医師に「それでも....家族じゃないですか。お互いに信じ合っていれば、家族で許せない事なんて無いと思うんです。お母さんがいる、姉弟がいる、それで十分じゃないですか」と言わせるのは微妙だなぁ。
もし「それでも動かなかった彼を動かしたのはアネキの想い」という流れにするための布石だとしたら、弟くんにもっと頑な姿勢を取らせた方が分かりやすかっただろう。
「どんなに腹が立っても、どれだけ離れてたって、やっぱ姉弟なんだよなぁ。ほんと、今更だけどあんたがアネキで良かったです」と、ベタなところに軟着陸する弟くん。相変わらず様々な描写が不足している気がするが、今更それを言っても仕方がないだろう。もう弟くんが開眼する以外話を収める方法無いし。
全部丸く収まってウキウキのドキドキ大会ですよ、のラスト。ここまで臆面も無く大団円やられちゃうと「ヨカッタネ」と言うしかない。
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