ごくせん
2005年3月27日 16:45 | コメント (0) | トラックバック (0)
基本情報
公式ページ 日本テレビ系列:土曜21時 森本 梢子による同名コミックをドラマ化したもので、今作は第二シリーズ。とあるヤクザの四代目を期待されつつも教師が天職と信じる山口久美子が、問題児だらけのクラスとがっぷり四つに組んで渡り合う熱血教師モノ。つまり極道先生で「ごくせん」 出演は仲間由紀恵、亀梨 和也、生瀬 勝久、東 幹久、乙葉など。
シリーズ総観
全体として奇をてらわずベタをきちんと描く事に主眼が置かれており、それらはおおむね上手くいっていたと思う。話数が十話と短いため、生徒たちとヤンクミが最初の信頼関係を結ぶまでの流れが大幅に端折られていたのは惜しい所だが(実際のところ、信頼関係というのはその「最初」の足がかりを作るのが最も大変なのだが)そこはお約束として流し、とにかく大活躍するヤンクミの姿をかっこ良く、清々しく描くという割り切りは正しかったと思う。
第八話・第九話以外は良く出来た王道ストーリーで、見る者が期待する展開と画をきっちり描いていたと思う。教え子のピンチに威勢のいい啖呵と共にあらわれ、髪をほどいて悪役の前に進むヤンクミはまさに時代劇のクライマックスさながらで気持ち良かった。
もう少し話数があれば違った毛色や、多少深めの話も見られた気もするが、十話でまとめるとなると、今回のように似たような系統の話に終始してしまうのは仕方がないと言ったところだろうか。
第一話
笑っちゃうくらい前シリーズと同じでびっくり。「ピンチに陥った生徒のもとに主人公ヤンクミが颯爽と駆けつけ、威勢のいい啖呵と共に敵をバッタバッタと殴り捨てる」という部分は水戸黄門や遠山の金さんのクライマックスに当たるシーンなので同じでも問題ないが、一話でざっと語られた教師や生徒の人物配置があまりにも前作とかぶっている。まあ、あまり細かい事を気にせずに見る作品と言ってしまえばそれまでだが。
第二話
第一話・第二話ともヤンクミが生徒に説教するシーンがあるのだが、どちらもそこに至までの掘り下げが浅いため、とってつけた物になってしまっている。これまでに描かれた生徒達の不良っぷりというのは、単に授業中に騒いでいるとか、放課後にゲームセンターでカツアゲしているといった表面的な部分である。(いやま、カツアゲは十分に悪い事ではあるが)
説教...それも反抗心を持つ者を相手に行う説教というのは、その言葉自体はもちろん、それを言うに至る経緯も含めて相手の内面に迫っていないと心に響きはしない。自分の内面にまでぶつかってきてくれた相手が、それを真正面から見据えた上で、他の誰に向けてでもない自分に対しての言葉を言ってくれる。センコーなんて大嫌いで信用できねーんだよ、という学生が何故「センコーが大嫌いで信用できねー」のかといえば、会う度に表層的で通り一遍の説教を繰り返すからである。
確かに、ヤンクミの言っていた事は間違っていないし筋も通っている。何よりこういったドラマではよく耳にする内容であり、それを聞いて不良がどういう反応をするのかまで想像できるような定番の説教である。しかしその定番の登場は時期尚早であり、単にお定まりのやりとりを突如割り込ませたお芝居といった印象が強い。
もう少し引っ張るのかと思ったクラスのボス格2人の確執はあっさりと解消。内部に火種を抱えていると話を簡単に作り出せるため、しばらくはこれでいくのかと思ったのだがどうやらその先を描いてくれるようだ。ただしナンバー1と2が同じ方向、しかもヤンクミを好意的に捉える方向に進むと「不良との正面からのとっくみ合い」を自然に描くのはかなり難しいため多少不安ではある。
第三話
仲間にならないかという誘いを断ったとして、かつて黒銀学園の生徒だった男が小田切と矢吹に疑いがかかるよう細工して強盗事件を起こす。
生徒達から罠を仕掛けた人間の目星を聞いて話をつけに行こうとするヤンクミと、今回ばかりは相手が悪いと止めようとする生徒達。う〜ん、確かに相手が何者であろうと立ち向かうヤンクミのかっこ良さは強調されているかもしれないが、この流れはイカンだろ。止めようとする生徒達に対してヤンクミは「でもあいつらは、あたしの大事な生徒なんだ」と答えているのだが、ヤンクミが立ち上がるまであきらめムードを漂わせているこの状況ではむしろ「おまえ達、仲間が罠にはめられたってのに黙っていられるのか?」と説教して欲しいくらいだ。
いちおう、制止を振り切るように教室を出て行ったヤンクミの後を次々と生徒達が追うのだが、これではヤンクミが出て行かなかったら生徒達は諦めていたようにしか見えない。実際はまあ不良の世界にも勢力地図があり、何も考えずいつでも暴れる訳ではないだろうが、少なくともドラマ上は 3-D の生徒達は「愛すべき向こう見ずの不良ども」に描いておく必要があるのだ。
ここで放送でも使われた啖呵を切るシーンを挟み、ヤンクミは再度この時間は自習だと宣言して教室を飛び出す。それを見た生徒達は当然のように後を追いかけて行く。
このようにすれば、ヤンクミのかっこ良さ(とせっかく用意した啖呵)を邪魔すること無く、生徒たちを愛すべきバカに描く事ができる。また、大騒ぎする生徒達をなだめるシーンに「暴力を使っても問題は解決しない」という説教を挟めばヤンクミのかっこ良さはさらに際立つ。(まあ、ヤンクミ自身「暴」はつかないものの、たいていの問題は力で解決しているのだが)
それ以外は綺麗にまとまっていたし、刑事に啖呵を切る場面もスカっと決まっていたのでなおさらこのシーンが残念だった。
第四話
土屋は万引きを止めた事をきっかけにまじめ一途の女子中学生と仲良くなる。勉強につかれた彼女を励ます為に一緒に遊ぶ土屋だが、後日そそのかして連れ回していたと誤解されてしまう。
話の流れは超がつくほどの定番だが各要素の配置や描写が綺麗にまとまっており、「単なるありがち」ではなく「きちんとした王道」に仕上がっている。女子中学生の担任は過去に土屋と因縁があった教師なのだが、これを上手く絡めて単に女子中学生が可愛いから、可哀相だから庇うのではなく、当時と全く変わらず人の話を聞かずに頭ごなしに叱る教師の様子に腹を立て、行動を起こす流れにもっていくところが巧い。
これまではいきなりで取ってつけた印象の強かったヤンクミの説教も、今回はごく自然だった。さらに、学校に残りたいという気持ちを土屋自ら告白するシーンをきっちり入れ、そこからお約束の 3-D 一同の職員会議乱入に女子中学生による真相の説明、それでも納得できない中学教師にヤンクミがバシリと啖呵をきめるシーンまで、気持ちよく転がるクライマックスも良く出来ていた。
ただ、他が良かっただけに気になった細かい点ではあるが、途中、ヤンクミの奮闘を見せるために土屋を呼ぶところまではいいのだが、そこで他の生徒が次々につぶやく「うぜぇけどイイ奴だよな」といった感想は蛇足だろう。これまでで既にヤンクミは、生徒と真正面に接し親身になって自らの体を動かすという評価を受けており、生徒たちがここで初めて気づくような事ではない。なにより、このエピソードでも終始一貫して土屋を信じ続け、なんとかしようと行動する様子は土屋本人を含め知っており、わざわざ確認するまでも無い事なのだ。ここで必要以上にヤンクミを持ち上げても、シーンが盛り上がるというより演出の匂いが漂うだけだろう。
第五話
バレンタインに浮かれるヤンクミと 3-D 一同。強い男が好きだという女の子にカッコいい所を見せるため暴漢を追い払う芝居を企てるが、一緒にいた男に返り討ちにされた挙げ句計画がばれ、卑怯者だと彼女に嫌われてしまう。
先週と同じく超定番だがその作りは完璧。最初から最後まで、ストーリーはもちろん小ネタに至るまで全てのシーンがお約束で構成されており、新鮮な驚きはひと欠片も無いがお約束を描くという制作者の意図は完全に達成されている。
こうなるんだろうなと視聴者が想像するシーンをそのまま画面に描き出し、こうなって欲しいと期待するお話をどこまでもその形のまま見せる。こんな風に書くと新たな工夫が無い簡単な作業のように聞こえるかもしれないが、実際にそれを行うのはなかなか難しい。
定番をやろうとする際に最も重要なのは何を描き何を描かないかというバランスである。描き足りなければ、外見だけどこかで見かけた中身のないがらんどうの作品になるし、描きすぎればしつこい描写にゲップが出るクドいものとなる。これはいわば「複雑な絵は模写した時に割合簡単に似ていると感じるが、単純な絵はほんの少し違うだけで全く別物に見える」という構造によく似ている。そして、今回のエピソードはコピー機を使って複製したかの如く定番そのものだった。
念のために断っておくが、今回こんなにもベタ褒めなのはチョコレート製作中の仲間由紀恵のポニーテール姿にヤラれたからではない。
第六話
卒業を控え「自立するため」と、家にも帰らず夜の繁華街で働き続け、母親にぞんざいな態度を取る生徒に怒り心頭のヤンクミ。しかし、祖父に「その年頃ってのは、自分が出来る事、出来ない事を手探りで探そうともがいてる最中だ」と言われ思い直す。翌日学校に行くと、問題の生徒と仲の良かった面々が「あのヤロウ、きっちり働いてるオレはお前達とは違う、みたいに言いやがって」と不満を漏らしていた。そこで我らがヤンクミ「あいつだって不安だけど、不安だからこそ頑張ってるんだ」と説教をぶちかます。
母親に対して、自分たちに対してという対象こそ違えど、ヤンクミと生徒達が腹を立てているポイントは同じである。つまり、この状況は「昨日まで同じように、同じ部分に腹を立てていたヤンクミが、祖父に言われた言葉と同じような内容で生徒達を諭した」という、いわば「受け売り説教」である。
もちろん、ヤンクミは祖父の説教をきちんと受け止め心から納得したため(昨日は自分でも同じように思っていた)生徒達の反応にごく自然と違和感を覚えて説教したのである。そうして出た説教というのは、例え形が似ていようとも「中身の無い受け売り」ではない。
とはいえ、ある言葉で考え方をガラリと変えた人間に、同じような言葉で説教されたとしたら、何となく釈然としない人が多いのではないだろうか。それは、本人の中で考え方がガラリと一瞬で変わってしまう事は珍しくないが、心が覗ける訳でもない他人にとっては、その過程や実際に心が変わった事を目にしないと納得できないためである。
つまり、ヤンクミの成長を描くという意味で、思い違いを祖父に諭されるというシーンがあるのは重要だが、それをヤンクミが自分の価値観として取り入れる様子をある程度描かない事には説得力に欠けるのだ。しかし、劇中では「祖父の説教・CM・ヤンクミの説教」というトホホな流れになっている。フィクションとしてヤンクミの行動に説得力をつけるには、生徒の態度を思い返して言葉の端々にもがいている様子を見いだす回想や、実際に生徒と相対してぞんざいな態度をとられてもなお、「こいつはこいつなりに頑張ってるんだ」と受け止めるシーンが必要だろう。
最後に再び「一人で大きくなったつもりでいるんじゃねぇ」と本人に説教してしまう展開も含めて今回はいまいち。(あの場面であの説教が出る事自体は正解なのだが、ああいう流れに持っていく展開が問題。話の焦点がぼやけてしまう)
第七話
卒業を控え就職の時期。しかし 3-D の生徒達は、面接前日にケンカしている様子を面接官に見られていて門前払いを食らってしまう。一度は自暴自棄になるものの奮闘するヤンクミの姿に心を打たれ、卒業まで問題行動を起こさないと誓った彼らの前に、他校の不良が現れる.....
相変わらず良く出来たベタ。ただ、前日のケンカが原因で面接が中止になった生徒に対し、理由を問う前に説教を始める流れは良くない。言っている内容は間違っていないし、何よりこのシーンのウェイトは説教の後にあるので時間的都合で端折ったのかもしれないが、やはり理由を聞いた上で「それでも耐えるべき時ってもんがあるんだ」と言わせるべきだっただろう。
また、ラストシーン生徒達にかけた「まさか(あの約束を守って抵抗していないのか)」「バカじゃねぇのか。こんなになってまで」というセリフは無い方が良かった。生徒達を信頼するならここは「あいつら(私との約束を守って抵抗してないんだな)」「こんなになっても、よく我慢したな」としたほうがしっくりくる。まあ徹底したベタ攻勢なので、物語の整合性よりもアリガチなセリフでその場を盛り上げる事を優先したと考えれば、それはそれでアリである。
第八話
これまでも何度か登場していた、前作の教え子でラーメン屋を営む熊井がメインのエピソード。真っ直ぐに店を切り盛りする熊井の姿に 3-D の生徒達が感銘を受けるという流れで、矢吹と父親の確執問題をからめていくのだがイマイチ。
熊井のエピソードの方はいつも通りのベタでごく普通の出来だったのだが、その経験によって矢吹が父親を理解するという流れが弱い。「親父は嫌いだったけど、オレはあの店を守る」と言う熊井の姿に、これまでの父親の態度に思うところがあったのかもしれないが、肝心の「今まで嫌だった親父の態度や生き方の、こういう部分を見直した」という描写が無いのだ。
第五話の感想で「定番をやろうとする際に最も重要なのは何を描き何を描かないかというバランス」と書いたが、今回はあまりにも描き足りないために、たんなるありがち話に終わっていた。
第九話
そういやシリーズ序盤にそんな事言ってた気がするな、という小田切と警察庁の高官である父親の確執を描いたエピソード。絶対的な自信を持ち息子をレールに乗せようとする父親と、反抗心を抱きつつ何も言えない息子という構図はこれまた徹底したベタなのだが、第八話と同じく細かい描写がまるで足りていないため、中身の無いがらんどうのハリボテと化している。
父親が通り一遍の薄っぺらな描写だけなのも問題だが、それ以上にどうしようもないのが小田切から見た父親像や、父親との関係性といった部分がほとんど描かれていない点。これまで父親に何を言い、何が言えなかったのか。どんな事を言われその中で何を納得し、何が納得できなかったのか。父親の姿に何を感じ、その父親にとって自分は何だと感じていたのか。そういった「自分の中の父親」「父親という存在と向き合った時の自分」をきっちり描かない事には、物語のスタート地点に立つ事さえできない。
いわば土台とも言える部分をほったらかしにしたまま、軟禁された小田切を助け出すだの退学騒ぎになるだの、乗り込んで来た父親に啖呵を切るだのといったお約束のシチュエーションを並べて、さあどうですかと言われてもリアクションのとりようが無い。これなら数十分かけてテレビ画面を見つめる必要はなく、数行のあらすじを読めばいいだけの話だ。いまいちよく分からない小田切の物言いに一言も反論する事無く呆然とした表情で聞き入り、そのうえあっさりと改心する父親の姿はもはやギャグでしかない。
軽自動車が F1 をブチ抜く様子を撮影する事自体は、F1 をのろのろと走らせれば済む。しかし、その映像に真実味を持たせ、観客が手に汗を握って興奮しながら見てくれるものにするためには、相応の前準備とハッタリ、それに細かな演出が必要な事を忘れてはいけない。
第十話(最終話)
第三話で登場した悪者と刑事が再登場しての卒業退学すったもんだ話。ヤンクミと約束したから無抵抗を貫くというのは第七話でやったパターンだが、そこをステップにして全員退学、ヤンクミ進退問題といったクライマックスにつなげる流れはうまい。展開も割と自然で、生徒たちヤンクミ共に見せ場が多かった。
後半はただただ盛り上がるシーンを畳み掛け・重ねがけするという力技でややゲップ気味だったが、安易に生徒も卒業ヤンクミも復職といったラストにしないところは良かった。「おまえたちの卒業には私の首をかけるだけの価値がある」というヤンクミの決意を正面から受け止め、卒業式に向かうシーンは説教がうまくハマっていた。
話を盛り上げるためと言ってしまえばミもフタも無いが、理事長、公立学校じゃあるまいしそんなにイヤなら(そもそも、役所の手続きミスで雇っただけだし)さっさと辞めさせりゃいいのに。そんな中、バカのように真っ直ぐなヤンクミと根性の悪い理事長の間にあって、常識的な対応を見せつつ場をうまくコントロールする教頭はオトナだ。
お約束のラストも含め期待通りの王道っぷりを見せた最終回だった。
コメント(0)
トラックバック(0)
トラックバックURL : http://www.studio-ponytail.com/mt/mt-tb.cgi/92
コメントを投稿する
コメントの投稿には JavaScript が必要です。
ブラウザの JavaScript 機能を有効にしてください。
投稿ボタンを押してもエラーになりますのでご注意ください。