富豪刑事
2005年3月24日 01:54 | コメント (0) | トラックバック (1)
基本情報
公式ページ テレビ朝日系列:木曜21時
筒井康隆原作の同名小説をドラマ化したもの。原作の主人公は常に葉巻をくわえる大富豪の息子だが、ドラマ化に際し孫娘に変更されている。社会勉強とばかりに刑事になった大金持ちのお嬢様がうなる資金力に物を言わせトンデモな捜査で事件を解決するコメディ。主演は深田恭子で他に山下真司や升毅、相島一之なども。特捜戦隊デカレンジャーのデカレッド載寧龍二も刑事つながり(?)で出演。もちろん筒井康隆も出てくる。
シリーズ総観
原作は未読なのでオリジナルとの比較という意味ではなく、どこが富豪刑事なのかと尋ねたくなる作品。毎回ノルマの如く最初に「こんな風にお金を使います」と宣言したかと思うと、次のシーンでは使い終わって普通に捜査を開始しており、さらにその散財ぶりがそれ以降はほとんど関係ないとくる。推理に金持ちならではの着眼点がある訳でもないし、どんでん返しの逆転劇に金がからむでもない。
もちろんタイトルが富豪刑事だからといって金を使うシーンばかり描く必要は無いのだが、それ以外の部分が総じて面白くないので、それならせめて看板に掲げた部分くらいしっかりやってくれという事である。
設定自体は面白く、いくらでも話を転がせそうなのに完全に空回りに終わっていた印象。なんとか見られたのは一話・二話・最終話くらいで、後はかなりキツイ。
第一話 富豪刑事の囮
「金持ちでチャラチャラしたお嬢ちゃん」という事でハナっから回りの人間に疎まれ嫌がらせを受けるが、それらの遥か上をいく切り返しを素で見せる様子が小気味いい。
今回は時効が迫った5億円強奪犯に贅沢な生活を体験させ、本来は時効が来るまで隠していたであろう金を使わせ逮捕しようという作戦。こういった話の場合、無駄にスケールを大きくすることが面白さのポイントだが、発明好きの容疑者の為に研究所を用意し、著名人との対談の場を用意して TIME 紙の表紙を飾らせ、そして追い込みとばかりに盛大なパーティーを開くといったあたりは初エピソードとしてはまずまずのハジけっぷり。
ストーリー自体は最後のヒネリも含めて予想の範疇だが「まずは主役の立ち位置と魅力を見せる」という意味では非常に良い第一話だった。
第二話 美術館の富豪刑事
今回の捜査手法は「美術館で一番高価な絵を盗みにくるという怪盗を混乱させる為に、さらに高価な絵画をそのまわりに配置しておく」というもの。ただし、美術館が新たに絵を購入したという噂を流す為に実際に絵を購入するが、万が一を考え贋作師に描かせたフェイクを配置する。
前回は金に物を言わせた作戦でたたみかけたが、今回は主人公の推理とひらめきが次々と描かれた。普通の刑事物として見れば、このような謎解きの連続が見所なのだが、富豪刑事という看板を掲げるならやはり推理だのヒラメキだのよりは、トンデモな捜査をこれでもかと見せて欲しかった。
犯人を暴くキーとなったのは「贋作を配置する予定だったが、贋作師がドタキャンしたので仕方なく実物を飾っていた」という出来事で、ここでも主人公は見事な推理を見せたのだが、真作を飾った理由をアクシデントによる不可抗力にしてしまったのはもったいない。
主人公をキレモノに描きたいなら「二重の罠をしかけるため真作を飾っていた」とすればいいように、「やっぱり美術館に贋作を飾るのは良くないですから。万が一盗まれたら? まあ、その時はその時ですよね」という理由で真作を飾っておけば富豪っぷりが際立つと共に、それが事件の解決と結びついて、より「らしく」なったと思う。
第三話 密室の富豪刑事
商売敵を殺したが証拠不十分で釈放されてしまった犯人を、新たに会社を作ってライバルとなり再犯させて捕まえようという作戦。非効率かつ金をムリヤリ使う富豪刑事の名にふさわしい捜査方法で、社長が殺されていたビルと全く同じ構造の自社ビルを建ててしまうやりすぎぶりも良かった。しかし、それ以降はごくまっとうに良い社員を雇い、良い製品を作ってクリーンに入札を行い、真っ正直に商売して着実に業績を伸ばしてしまう。ここはやはり、急造会社の業績をムリヤリ伸ばす為にさらに金を使いまくって欲しかった。
しかし、それよりも気になったのが、後半のアリバイトリック説明のマズさである。犯人に脅されて嘘の証言をした人間が殺され死体が川から発見されるのだが、その一連の流れは次のようなものである。
- 13時30分に被害者から富豪刑事に「告白する事があるので本日14時に水門に来て欲しい」と電話が来る
- 富豪刑事は時間通り水門に向かうが、14時30分になっても相手が現れない事を不審に思い周囲を探すと血痕を発見する。捜索範囲を広げた富豪刑事は下流で遺体を発見する
- 捜査陣が集まり「撲殺・死亡推定時刻は13時〜15時」という検死報告を聞かされる
- 上司が「被害者はお前に何かを言おうとした。しかし、それを知った犯人が水門(血痕発見場所)で待ち伏せして殺害し、川に投げ入れてここで発見されたんだ」という推理を述べる
- 目星をつけていた犯人を連れてくるも、13時からカラオケボックスにいたというアリバイがあった。
- 途中5分間だけ席を外した事が分かるが、殺害現場は5分で往復できるような距離には無く犯行は不可能という事になる
- 富豪刑事が「カラオケボックス」「殺害現場」「遺体発見場所」が川の上流から順番に並んでいる事に気づき、本当の殺害現場はカラオケボックス近くで、そこから死体を流せば5分間での犯行が可能であると推理する
- この後、被害者のカツラが決定打となるのだが、そこは関係ないので省略
確かに、富豪刑事が推理する通りアリバイトリックは成立するのだが、それをすんなりと観客に納得させるには2つほど説明不足な点がある。
まず、被害者が富豪刑事に告白する事を、犯人は13時30分の電話より前に既に知っていた事を明示すべきである。犯人の殺意が上司の推理通り被害者の告白にあるなら、少なくともアリバイ工作開始の13時より前にそれを知っている必要がある。確かに回想で描かれた殺害シーンでは、被害者が「今日、警察に全部話すからな」と言っても犯人は驚いていないので、既に知っていたか少なくとも予想していたのだと推測することはできる。しかし、それ以外の部分をバカ丁寧に説明している事を考えれば、ここもきちんと明示すべきだろう。ここまでの描写では、観客に「被害者が刑事に告白しようと決心したのは電話をした瞬間」としか映っておらず、その<観客内事実>からすると犯人がそれを知るのは電話した後(もしくはしている瞬間)になってしまうのだ。すでに知っていることを明示するには、火曜サスペンス劇場の犯人のようにつらつらと説明させるのが最も簡単かつ確実だが、話のテンポを重要視するなら回想シーンに組み込んで被害者の「警察に話すからな」というセリフに「やっぱりな」とでも言わせておけばいい。
(「犯人は被害者が警察に何かを言おうが言うまいが殺すつもりでいた」と、上司の推理を否定する路線もある。つまり、犯人はとにかく被害者を殺すつもりでいて、たまたまその直前に告白の約束を行ったというシナリオ)
次に「犯人が被害者をカラオケボックス近くに呼び出していた」という事実を明示すべきである。これまた確かに回想シーンを見ればお互いが顔をあわせても驚く様子がないので、なんらかの待ち合わせをしていた事は予想できる。しかし、回想も含めて犯人が被害者を呼び出すシーンも無ければ、何の為に会っているかも描かないうちに犯行に移るので、アリバイ工作の為にあえて呼び出したという印象が薄いのだ。これも、火サスするなり回想シーンで被害者に「何の用なんだ。それよりも警察に話すからな」と言わせるだけでいい。
これらは、どちらか一方が描いてあればそれによりもう一方が想像できるが、親切にするならやはり両方バカ正直に描いておくべきだろう。
この2つを明示しない放送されたままの内容でも、全てを見る事ができる観客は事件の全貌を把握する事が可能である。しかし、作中の人物はどうだろう? 彼らは「警察に話すからな」というセリフを聞いても驚かない犯人や、待ち合わせをしていたらしき様子の二人を見る事はできないのだ。その場合なんらかの疑問を述べるのが自然であり、逆に言えば観客が答えを知っている疑問を犯人にぶつけるシーンなんてものを作らなくてもいいように、普通のサスペンスものでは犯人の独白といった形で作中人物への説明も済ませているのだ。原作の小説はどのようになっているのだろう。
第四話 富豪刑事のキッドナップ
誘拐犯のフットワークが悪くなるよう1億円という重量級の身代金を用意する作戦。
解決したかのように見えた誘拐事件は実は狂言だった、のような2段構えは恒例なのだろうか。富豪刑事というよりも単に勘の鋭いお嬢様刑事といった感じ。被害者宅に待機して滞り無く電話の逆探知作業を行い、興奮する家族に落ち着いた対応を見せる様子はまさにごく普通の刑事。「庶民の気持ちになって考えてみると」というセリフで始まる推理もあるが、気持ちにならずとも元から庶民である他の刑事が気づいていないわけで、これもやはり富豪刑事ならではというより単に観察力に優れた刑事でしか無い。
誘拐事件と大富豪というとマンガ「みんなあげちゃう」にあった、大事な婿が誘拐された際に私設軍隊を一個師団用意した上に、数百億円分の札束で犯人をアジトごと押し潰すというエピソードを思い出す。こんなのと無意識に比べるから富豪刑事が大人しく見えるのだろうか。いや、でもやはり富豪刑事というからにはもっと無意味に非効率かつインパクト重視でカネを使いまくって欲しいところだ。
第五話 ホテルの富豪刑事
手打ちを行う2組のヤクザをまとめて監視するために、大きなホテルを借り切った上で、それ以外の宿泊施設全てをダミーの客で埋める作戦。電卓を叩いた西島刑事によるとかかる経費は6億円弱とのこと。
これのどこが富豪刑事なのだろう。(原作を読んでいないので、原作の富豪刑事と違うという意味ではない)6億円弱という経費は間違いなく富豪という設定ならではなのだが、「お金をかけまくった作戦が凄い」といった驚きは全く感じられなかった。畳み掛ける展開が無くノルマを果たすが如く最初に金を使って終わりだから、というのも理由の一つだが、それ以上にどうしようもないのが実際にカネを使う描写が一切無いところである。
「大きなホテルはおじいさまのものなので貸し切りまーす。それで、市内のそれ以外のホテルは警察職員の家族のみなさんに泊まってもらいまーす」とお嬢様が宣言した次のカットでは、前準備は終了してすでに警備を開始している。
一体何を考えているのだろう。6億もの金を使ってスケールの大きな作戦を行うというのなら、富豪刑事としての見せ場は間違いなくここなのである。ここを省略するというのは遠山の金さんのクライマックスで、金さんが登場した瞬間に悪役が正体に気づいていきなり土下座し、チャンバラはもちろん桜吹雪云々の啖呵を切る事無く話が終わってしまうようなものである。
怒濤の勢いでキャンセル処理を終わらせると、今度は市内のホテルを全て借り切る為に窓口・電話・ネットとあらゆる手段を使って人海戦術で予約を埋めて行く。警察関係者とその家族を合わせても市内のホテルを借り切るには人数が足りないため、途中からはペットの犬でも猫でも客にでっちあげて部屋を借りようとする。そこでゴネるホテルにはまたもや札束攻撃。(もちろん、実際は予約をいちいち個別に行う必要は無いし、ペットを泊まらせるくらいなら部屋を押さえるだけ押さえて誰も行かなければいいだけの話なのだが、インパクトとバカバカしさ優先である)
富豪刑事という看板を掲げ、金を使った捜査というフレーズを売りにするなら、せめてこの程度の絵を見せるべきである。撮影の手間とコストは別にして、面白くもないギャグを数カ所削れば実際の画面に盛り込む時間的余裕は十分にある。
もちろん、他のシーンや話の展開が魅力に溢れていれば「富豪刑事だから金使え」ばかりを繰り返してこの部分に固執する必要は無いのだが、残念ながら「お嬢様刑事が鋭い視点であれよあれよと事件を解決するコメディ」として見てもテンポが悪く面白くないのだ。
第六話 富豪刑事の遺体捜索
株券と共に埋められた遺体を犯人自身に掘り起こさせようと、会社の株価を上げる作戦。
相変わらず富豪関係なし。これまでの事件では一応金を使った作戦が事件を解決に導くきっかけとなっていたが、今回はそれすらも無い。
ただ、演出のテンポや話の転がり方などは先週分よりは多少マシだったので「お嬢様刑事」としてはいくらか楽しむ事ができた。原作を読んでいないのでこの構成の悪さが原作によるものなのか(なんて事を書くと筒井康隆ファンに怒られそうだが)ドラマスタッフによるものなのか分からないが、どうして富豪を名乗るくせに毎度毎度ノルマ的に金を使って終わりという展開にするのだろう。
第七話 富豪刑事の古美術品騒動
つっこみ所や不満点は山ほどあるが、それらをいちいち挙げつらう価値もない。とりあえず、設定や状況に多少なりとも説得力があるかどうか冷静になって考え直したほうが良い。演出に関しても「気持ちよいベタ」と「単なる寒いお約束」は別物であると認識すべき。
第八話 富豪刑事の要人警護
「大蔵議員を狙撃した人に1000万円」というインターネット上の書き込みに反応すると思われる、まだ見ぬ犯人をおびき寄せる為に賞金1億円の射的大会を開く。
「射的大会を開く・その途中に大蔵議員ではなく婦人が殺される・実は狙撃は狂言で議員が婦人を殺す計画だった」という話の構成自体は悪くないと思うのだが、それぞれの描写が相変わらずトホホでそれを見事にブチ壊していた。
豪華な会場を建設しようと息巻く祖父に「派手にすると怪しまれる」と言うのは当然だが、あそこまでチープにする必要も無いだろう。また、射的大会は狙撃を防ぐために開いたのかと思いきや、犯人を捕まえるつもりだったらしい。途中でアリバイ(それまでに、失敗に終わったものの狙撃が行われていた)を尋ねたり、「私たちが警察である事をバラした時に、わざと手を抜いた人が犯人」などともっともらしい事を言っていたが、逮捕はもちろん、それでどうやって犯人が見つけられると言うのか。
主人公と警部は射的大会が盛り上がれば犯人が分かると考えて行動しているらしいが、「射的大会が盛り上がって凄い腕の人が出てくる」と「犯人が断定でき、うまくいけば逮捕できる」を結びつけようとする事自体が間違いで、そんな風に描かれると見ているこっちは「バカかこいつら」とシラけてしまう。射的大会は純粋に犯人を引きつける事を目的として、以下のようなギャグとして使った方が良かったと思う。
最後の推理が富豪関係ナシなのはもう言い飽きた。銃に関して、ライフル弾が薄っぺらいプラカードもぶち抜けないのはどういう事だとか、上から奥さんを撃ったら弾丸が頭を貫通して地面に突き刺さるとか、そもそもあんな至近距離でライフル弾を食らったらアタマ弾け飛ぶよとか、つっこみ所満載なのもこの作品のクオリティなら納得。
第九話 学園の富豪刑事
高校ラグビー部のコーチが連続で襲われる事件が発生。犯人は、ラグビー部を辞めさせられコーチに恨みを持つ生徒だと睨んだ警察は、いくつかの条件で絞った37人を一括監視するために学校を作る。
スクールウォーズのパロディをやったつもりなのだろうが、この中途半端さはパロディというより単なる内輪ウケである。(内輪ウケをネタの知名度で区切る人がいるが、両者の違いはそこではない。今回のスクールウォーズネタは、単に元ネタを知っている人がたくさんいるだけの内輪ウケ)あの程度にしか描かないのなら最初だけネタにして、後は触れないようにする方がマシ。特に、出だししか似ていないテーマソングを延々と流すシーンは薄ら寒い。ああいったものはインパクト重視のシーンにワンフレーズだけ使う事で生きてくる。
先週に引き続き大筋は悪くなかったと思うが、やはりそれぞれのパートにおける展開が苦しい。真相に辿り着くまでの流れはこれまでで最も自然だったが、最後の「優勝トロフィーに凶器を隠した」ってのはあんまりだ。また、スポーツ賭博の胴元が競技場で殺されたって時に、そいつとグルだったコーチを真っ先に調べないボンクラどもに何か言ってやりたい。
第十話(最終話) 絶体絶命の富豪刑事
つっこみ所満載なのは相変わらずなのだが、細かい事言いっこナシとばかりに、テンポよくコロコロと話が転がるので楽しんで見る事ができた。ただ、筒井康隆と主人公の祖父との関係が肩すかしで笑わせるにしても中途半端だったり、せっかく毎回少しずつ描写を重ねていたデカレッド載寧龍二刑事やヤクザ風刑事との恋愛ネタに触れぬまま終わるなど惜しい部分もちらほら。
風で飛んだ一万円札がパリやニューヨークにまで届いて舞い散るってのは「スケールが大きな描写」ではなく、単なる意味不明の映像である。警察に追われて逃げ回る泥棒や窃盗犯が、空から降ってくる紙幣に気を取られて捕まるなんて事が東京各地で次々に起こる(もしくは逆に混乱を招く)程度にしておいた方が良かったと思う。
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くちこみ評判良品:富豪刑事デラックス (2006年4月22日 16:16)
2005年1月クールに放送され、話題を呼んだドラマ「富豪刑事」
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