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ドラゴン桜

2005年9月17日 19:15 | コメント (2) | トラックバック (2)

基本情報

公式ページ  TBS 系列:金曜22時

 三田紀房の同名マンガ をドラマ化したもの。元暴走族の落ちこぼれ弁護士・桜木建二(阿部寛)は、多額の負債を抱え倒産寸前の私立高校を再建させるために「東大合格者を輩出する超進学校に生まれ変わらせる」というアイディアを思いつく。出演は阿部寛、長谷川京子、野際陽子、山下智久、小池徹平、長澤まさみほか。

 それまでの価値観をブチ壊すスゲエ男がやってきたぜ、というパターンの学園モノ。唯我独尊な主人公が周囲をグイグイと引き込む様子が見どころ。公式ページ・キャスト紹介 の山下智久の所は相変わらず写真が無くて、ジャニーズ事務所は徹底してるなぁと、どうでもいい事に感心してみたり。

概観

催眠商法か新興宗教のごとく、魅惑的な言葉とメリハリの聞いた話しぶりで聞く者の心を鷲掴みにする「桜木劇場」がなんともクセになる作品。

  • 誰もが一度くらいはなんとなく考えた事がある問題を提起する
  • 聞かれた人間が、その問題に対する無難な(=視聴者も「まあそんなところかな」と納得できる)答えを返す
  • 桜木が自信満々にそれを否定する
  • 否定された人間は、またもやその否定に対する無難な反論を行う
  • 桜木がさっきよりさらに自信満々に、ふてぶてしく自分の論を展開する
  • 聞いてる人間思わず納得

 桜木劇場の構成はたいてい上記の通りだが、それぞれがきちんとツボをおさえて描かれており、ケムに巻かれる聴衆と見事に彼らを操る桜木の様子が気持ちよい。

 また、ハッタリで魅せる作品の場合、常識からの落差や論の展開も重要だが、そこで語られた内容の正しさを見せる必要がある。そんな中、受験勉強に関するノウハウに説得力があったのは当然として、「人生にはいろんな選択肢があって、どれを選んでも正解だ」という主張の正しさもきちんと証明されていた。

 具体的には「冤罪を晴らして得られる名誉よりも、それにかかる労力と時間をとる」「病気の母親の為に今年は東大受験を諦める」という2つのエピソードだ。フィクションの場合「積極的に冤罪を晴らそうとしなかったけど、目撃者やらが登場して問題解決。主人公の名誉は回復しました」だったり、「諦める事を決心したけど奇跡が起こってなんとかなりました」といったふうに、正直者が報われる展開になりがちだが、こう描いてしまうと途端に「どれを選んでも正解だ」という前提がぼやけてしまう。
 正解ということは、それを選んだ人物はその結果起きる現実を受け入れている、受け入れる覚悟ができているという事である。しかし、前述のように丸く収まってしまうと、観客の目には登場人物が相応の覚悟をもってその選択肢を選んだ事よりも、結果的に....ご褒美のごとく....上手く行ってしまった印象が強く残る。
 つまり、「どれも正解」の「どれ」が意外なものであればあるほど、その結果起きる現実を真正面から受け止めてなお納得する様子を描く必要があるのだ。

 ふてぶてしいまでの桜木に気持ちよく騙される1時間。ミもフタもなく言ってしまえばそんな内容の作品だが、最後まできっちり騙し通してくれた。

第一話 人生を変えろ!東大へ行け

前半30分は見逃してしまい、基本設定は公式ページのあらすじで確認。債権者を前に東大合格者を輩出するという計画を発表した後、もったいぶってカマしたハッタリが「少子化が進む中、東大の定員は多い。年々合格点も下がって来ており以前のような難関大学ではない。何もしないで諦めるのか」ってのは何かのギャグだろうと思わず苦笑してしまったが、それ以外、教師や生徒に対する啖呵はなかなかキマっていた。

 「生徒の個性を伸ばす教育を目指すべき」という一般的な正論を持ち出す井野に対して畳み掛けるように切り返して論破するシーンは、どこか得体の知れない迫力がうまく描けており、セリフの内容や言い回しにも説得力があった。
 緊急全校集会でふてぶてしく登場するヒールっぷりも心地よく、容赦のない言葉をあびせ「とにかくアイツは何か凄い事を言ってそうだ」と生徒たちを力づくで納得させる様にはニヤリとさせられた。
 自分が今まで思いもよらなかった事を自信満々に言い切られてしまうと、人は強い関心を惹かれるが、正にそうやってヒロインと生徒達の心をぐいと強引に自分の方に向かせた桜木の魅力がきちんと描かれていたエピソードだった。

 こういった作品では、いかに意外な価値観を相手が納得する形でつきつけるかがポイントになるが、債権者に対するハッタリを除いてうまく行っていたように思う。
 自分の為に学校を再建させる = 東大合格者を出す、という流れなので、この「自分の為に」が次第に取れて行くのがパターンだと思うが、好みで言えば「自分の為」のまま突っ走って欲しい気もする。

第二話 自分の弱さを知れ!

録画ミス。実際に動き始めた桜木の一発目の行動は重要なのだがまんまと見逃す。とほほ。

 ドラマの詳細な流れをテキスト化しているページ があり、そこを読んで今回の流れをひととおり把握する。原本をみていないので細かい感想やコメントは控えるが、ハッタリが効いていてなかなか面白そうな展開だったようだ。

第三話 遊べ!受験はスポーツだ!

約束の5人に1人足りないながらも、遂に動き出した特進クラス。手始めに1日16時間学習の10日間の特別強化合宿を行う。

 「理屈ズバンでハッタリをかまし、突拍子もない手法でそれを実践し、戸惑いながらもそれに取り組んだ者がその理屈を体感する。ついでに周囲は突拍子もない手法だけを見て嘲笑し戸惑う」こういったパターンの展開としては実にオーソドックスながら気持ちよい。アバンタイトルでの数学卓球は上手くいきすぎだが、視聴者に向けたドラマ的なハッタリとしてはアリだろう。

 5人目の特進クラスメンバーは小料理屋の娘・水野。店舗改築の打ち合わせに来た業者の男にバカにされ、東大入学の意思を宣言する流れは予定調和的なベタと言えるが、男と口論に至り、学歴をバカにされ東大進学を宣言するまでの展開はなかなか自然に描かれていた。他のシーンもそうだが、この作品は「確かにこう言われたらこう言い返すよな」というリアクションのポイントがおさえられており、ベタながら演出くささというのをあまり感じさせない作りになっている。

 自分の娘が東大なんて行けるわけがないと言う水野の母親と、5日後に高校数学レベルの計算テストを行い、特進クラス全員が満点取れるかどうかを賭ける桜木。奮闘し次第に自分の実力が高まって行くのを感じる一同、意気込んで本番に臨むが結果はほとんどの者が半分も答えを埋められず惨敗。しかし桜木には予想通りの結果で、受験とは合格点に達するか否かが問題で頑張った云々は関係ないと言い放つ。
 惨敗に終わったものの、くやし涙を流した水野を見て特進クラスでの学習を認める母親。そして桜木の本当の目的はその出来ないくやしさを感じさせる事だった。

 上に書いた通り、この部分の流れもセオリー通りながら全体、細部とも自然なリアクションの積み重ねで、話が気持ち良く転がって行く様子を楽しめた。ただ、桜木が理論で生徒達を納得させるのは当然でありそこが面白さのキモなのだが、矢島のセリフもかなり理詰めな説得力が前面に出た内容となっており、ここはもう少し感情優先でもいいんじゃないかなと思ったり。これこれこうだ、ときっちり持論を言い切る展開は好みだし、その説得力があればこそ友人達が納得して勉強を続ける流れになるのだが、序盤はもう少し無理矢理な感じがあってもそれはそれで楽しそうだ。

 細かいところだが、確かに桜木が宣言したのは「取れるかどうか賭けよう」であって「取らせます」ではないのだが、歓迎会に誘っておいてドタキャンするなんていう幼稚な手段で桜木を邪魔しようとした他の教師陣が、この結果を受けて大人しくしている事に多少違和感を覚えた。

第四話 壁にぶつかるまで我慢しろ

竹刀を振り回す伝説の数学教師と井野先生のチキンレースの2本立て。伝説の教師はいまいちハッタリ不足、チキンレースもぐだぐだ気味。

 勢いのあった前回に比べ全体的に大人しくパワー不足。そもそも、なんじゃそりゃーくらいにトンガっているなら伝説の教師として別の人物を登場させても面白いと思うが、この程度のハジケっぷりなら桜木が唯我独尊でやりたい放題やっている方が楽しそう。
 桜木が数学教師に対し「ちょっと飛ばし過ぎでは」と言う冒頭のシーンは、数学教師のインパクトを際立たせようという意図によるものだと思うが、ちとわざとらしい。桜木が一目おいている事を併せて描きたかったのかもしれないが、井野先生がつっこんで桜木が「いいんだよ、黙ってろ」と切って捨てるいつものパターンで見せた方がすっきりしただろう。つか、桜木は最初からもっとミもフタもない事言いまくりな気が。

 勉強に限らず、コツや必勝法といった類いのものは実践的になればなるほど、見せ物としてのハッタリが効きにくくなる。トランプを使った暗算ゲームはもちろん、応用問題の解き方だけを考えるという勉強法は面白味があまり無かった。(まあ、トランプの方は実践的だからイマイチって訳ではなく、単にインパクトに欠けるだけだが)
 チマチマしたテクニックよりも、最もハッタリの効いた「つめこみこそ教育」というフレーズをもっと前面に押し出した方が面白かったと思う。このタイプの物語ではブチ壊す価値観が広く信じられているほど面白い。そういった意味で、つめこみ教育に反旗を翻すという展開は、描き方によってはもっと盛り上がるはず。

 細かくつっこみたくなる部分は他にもいくつかあるが、そもそもたった一人が、それもカレシが他の女とイチャついてるのに嫉妬して飛び出した事を「今回の事は、壁にぶちあたるって意味でちょうど良かった」って扱いにする今回のエピソードそのものが疑問。前回の、やるだけやって本人達も手応えを感じていたのに全く歯が立たなかった事の方が、よっぽど壁だと思うのだが。

第五話 泣くな!お前の人生だ!

変わり者教師は先週の一人だけをアクセントとして登場させるのではなく、教科分出すのか。まあ、原作がマンガである事を考えればこういったパターンはセオリーなのかも。

 しかし、伝説の教師とやらのはっちゃけ具合や、その勉強法の見せ方がなんともトホホでチープ。理科教師が用意した「コマ割りマンガ理解術」にはそもそも興味をひかれないが、わかりやすい教材であると描くために、それを読んだ者に「わかりやすい」と言わせるってのはあまりにも芸がなさ過ぎ。
 続いて登場した古文の教師の言い分に至っては目新しさすらない。古文に出てくるような世界を描いたマンガを題材に選び、その頃の人はエッチだったと話す? 全国の古典教師の何千人もが同じような事を授業で言ってるっつーの。あさきゆめみし なんてのもある。
 その教師ども(ども扱い)が他教科の授業の様子を見て「うまいな。もう生徒たちの心をつかんどる」なんて話をしているあたりは、もはやうすら寒いというかイタい。あのな、きょーびこんなもんじゃ真面目に授業を受けようとしてるイイ子ちゃんの心をつかむ事すら出来ねぇよ。

 まあ学校教育なんてのはこれまで数十万という教師によって、ああでもないこうでもないと創意工夫されてきた分野だから、いまさら前例のない学習法を提示するのは難しいかもしれないが、それにしたってこれはあまりにも酷い。

 一方で教師の再雇用試験の方は、ハッタリが効いていて良かった。「問題を自分で作って、それに対する回答を書く」という面白そうな趣旨を、誰でも知っている小論文という形式にあてはめてしまった時は惜しいと思ったが、常識的なものを見せておいて落とすという展開にもっていくところが気持ちいい。

 これらアバンタイトルのグダグダっぷりにはゲンナリしたが、今回のメインである双子のエピソードは良かった。先入観による不当な扱いに憤慨し、無実の罪を認めることなく闘うべきだと、いつも通り常識的な反応を見せる井野先生と、一般的に、そして何よりフィクションではたいてい重視されるプライドを守る闘いのデメリットを強調する桜木。
 双子の家庭・他教師との対立・桜木を否定する生徒達など、えん罪により発生した様々な状況を、疑いを晴らす事によって次々に逆転して見せるのかと思いきや、それらはどうでもいいとばかりに双子兄 vs 弟の決着が山場。
 確かに、えん罪に関して桜木と緒方はデメリットを承知の上でそれ以上のメリットの為に受け入れており、この2人にとってそれを晴らす事はもはや眼中にないのだ。安易に目撃者などが登場してえん罪が晴れてしまえば、むしろ緒方の選択の意味は曖昧になってしまうだろう。

 既に今回の事件に興味のない緒方は前だけを見て歩みを進めており、それが気になる矢島は双子兄・弟と共に核心に触れて何かを思う。この構図はなかなかうまい。

 最初はキツかったけどなかなか良かったなー、と思っているとラストに語呂合わせ古文単語暗記法なんてものが。だからあーた。

第六話 英語対決!勝負だバカ6人

またしても見逃す。とほほ。以前と同様こちらのページ でストーリーを確認する。
 映像自体は見ていないので細かいコメントは控えるが、小ネタも含めてなかなか面白いエピソードだったようだ。桜木の啖呵も堂にいっていた様子。

第七話 見返してやる!東大模試!

ひょんな事から特進クラスがテレビに取りあげられてしまい、学園の債権者たちの手前、近く迫った東大模試で失敗するわけにいかなくなった桜木たち。テレビ取材に一時浮き足立つ面々だが、矢島のひっぱりによってそれを程良い緊張に変えて行く。

 桜木がいつもの調子で東大受験論をズバズバと言い切るのも気持ちよいが、そこに講師陣のちょっとした合いの手を入れる構成もなかなか。努力まっしぐらな生徒たちには若干物足りなさも感じるが、(次回予告でバレバレなように)今後の挫折のための布石を撒いているところなのだろう。
 桜木同様、生徒たちにとって東大受験・合格は「東京大学という学校に通うため」ではなく、自分の力を証明するため、その強大な看板で誰かを見返すための目標となっている。それぞれの見返したい相手や状況はベタなところが揃っているが、それをちょこちょこと丁寧に見せて行く演出が良い。

 テレビ報道によって「オマエらみたいなバカが東大に行けるわけないだろ」といったエピソードも入ってくるのかと思ったのだが、そのあたりはあっさりスルー。まあ、あまりにもベタな上に井野先生のような教師が主人公ならまだしも、桜木が主役では事件にすらならないかもしれない。

 桜木の話は最初からそうなのだが、今回の「東大行きのキップ」のネタは特に扇動的で、まるで購買欲を駆り立てて物を売りつける詐欺商法の口上のよう。とりあえず桜木の言っている事は間違っていないので問題はないのだが、同じノリでトンデモ理論や危ない思想をブチ上げても、つい賛同してしまいそうな迫力があったりする。

第八話 バカの涙...夏休み課外授業

桜木劇場全開。「相変わらず犯罪的に口がウメぇな」と矢島が言う通り、突き落とす際も持ち上げる際も、桜木の言葉はこれでもかと生徒たちの心を揺さぶる。

 これまでの流れを踏まえた上で「頑張ってこれじゃやってらんない」という生徒たちの反応も自然で、そこで桜木が種明かしをしない理由も納得のできるものだった。終始桜木の企み通りに事が運ぶ様子は、それに翻弄される生徒たちが多少可哀相に見える時もあるが、なかなかに爽快。

 結局桜木が言っているのは「おまえたちは、これからが伸びる時なんだ」というだけの事なのだが、謎めいた(いやバレバレ)プリントを作り、実際に東京大学に出向いて、似た境遇の合格者の声を実際に聞かせるというハッタリの効かせかたがイイ。

第九話 信じろ!成績は必ず上がる

保護者を集めての今後についての話し合いに中学生向けの高校説明会と、今回の桜木劇場は豪華2幕が上演された。
 「不満げな相手の物言いを受け流しながら桜木が自信満々に何かを言い切る・相手がそれに猛反発・ふてぶてしくそれを切って捨てて更なる論理をまくしたてる」 相手の反応はステロタイプなものに終始してしまい、その部分では若干物足りなさを感じたが、流れ自体はメリハリが効いていて気持ちよかった。

 その一方で、矢島の「頑張ってるのに結果が出ない」という悩みを、あっさりと口頭の論理だけで解決させてしまったのは迫力不足。確かに桜木の言った事で説明がついてしまうのだが、これまでより一歩進んだ悩みといえるこの問題を、いつもの調子であっさり済ませてしまうのは実に惜しい。
 まあ、今回のエピソードは他に語る部分も多く、さらにシリーズの構成として11話で終了してしまうようなので、ここで時間を取る訳にはいかないのかもしれない。

 勉強法や教室で桜木が語る内容に分かりやすい派手さは無くなり、極めてオーソドックスな論理が主体になってしまったが、それはそれで説得力が増していて良い感じ。いかにもマンガなインパクトを重視するならトンデモ勉強法を繰り出した方が盛り上がると思うが、取り組んでいるものが受験という「お勉強」なので、こういったマトモそうな理論の方がハッタリが効くのかもしれない。

 桜木の口車に乗せられた父母が、学校案内を求めて龍山高校のパンフレットを求める姿はやはり催眠商法の如く。桜木は弁護士を辞めて壷やら布団を売った方が金は稼げるだろう。

第十話 友情か受験か? 最後の決断

こいつはやられた。

 簡単には解決できず、みんなで手伝うという現状がとりあえずの最善であると思わせる状況設定。「みんなで手伝うぜ」というベタな友情物語を見せた後は、これまたオーソドックスに勉強に悪影響が出る様子と、肝心な手伝いにもトラブルが発生するという伏線。冒頭の会話や、一致団結するシーンを見せる事によって、全員が揃って勉強に取り組む事が大事だと思わせる印象づけ。その上いつも正しい桜木に「奴らは自らボランティアを辞めます。誰かに何かをやってあげるというのは、最初は気持がいい。しかし、奴らはまだ自分のケツも拭けない連中。そういう奴らが一番相手を傷つけるんだ。挙げ句全員で共倒れか?」と言わせる物語的な縛り。

 視聴者は言うまでもなくこの作品が作り話である事を知っている。つまり「そうは言っても何か桜木には上手い解決法があるんだろう、何か凄い偶然や奇跡が起こって大逆転するんだろう」と、もともと思っている。
 それに前述の描写が加わり、視聴者の目線は「友情も受験も取れる.....彼女が特進クラスとして一緒に勉強できる.....解決法は何だ」という方向に向けられた。(オレのような穿った見方をする人にとっては「これだけオーソドックスな伏線を用意して、さらに桜木のセリフや態度で縛りを加えた状態で、どうやって解決するんだ」という方向とも言える)

 ところが、実際に用意されていた解答は「みんなで仲良く一緒に、だけが東大への道じゃねぇ」というもの。

 これが現実に起こった場合、この結論に辿り着くのは(半ば仕方なく、という状況も含めれば)比較的簡単だと思う。しかし、フィクションだからという思い込みに加え、サブタイトルも含めてうまく配置されたミスディレクションによって、最も近くに存在するであろう解答が、目に入らないように隠されていた。

 放り投げたコインを素早く手で掴んで「どっち?」と聞かれ、左右どちらかの手を指したら、実は隣の人が持っていましたと言われた気分だ。

 友人たちを拒絶するポーズをとる直美と、それが芝居だと分かっていた友人たち。ネタ自体は定番だが、みんなを待つ直美、店の前で気合いを入れて明るく振る舞う友人たち、直美の言葉を聞いたみんなの反応、店から追い出して泣く直美と河原を歩く友人たち、といった描写のバランスが良く、気持ちよく見る事ができた。

 今回の桜木はハッタリではなく、ビシっと筋の通った言葉で魅せてくれた。直美に「一度だけお前に言う。頑張れ、頑張れば必ず望みは叶う」と言うのを、扉の向こうで井野先生が聞いているという展開もなかなか良かった。

最終話 お前らはもうバカじゃない!運命の合格発表

双子弟のサンドイッチトラップや矢島の手のケガは、ちょっとした話のアクセントで特に物語に関係することもなく 3人合格・2人不合格・1人途中棄権で終了。

 全員合格なんていうオチにはしないだろうと思っていたが、ここにきて母親の病気で水野を途中棄権させるとは思わなかった。しかし、信念を持って母親の見舞いを優先した水野が安易に試験に間に合うなんていう展開にしなかったところは、第五話(緒方が自らの考えでえん罪を受け入れたこと)を彷彿とさせて良かった。
 水野の行動を、桜木の言う「それも正解」とするならば、その覚悟通り物事が進んでもそれを受け入れる様子を描く事が重要であり、ここでまんまと間に合ってしまってはそれが台無しである。清々しく仲間を迎える水野がカッコ良かった。

 一方で残念だったのが東大を辞退した矢島の言葉。金銭面を主な理由として「仕方なく」辞退したように語っていたが、そうしてしまっては焦点がボヤけてしまう。「お金がなくて東大に行けないから、独学で司法試験を受ける」というのは、いわばセカンドベストな選択肢だ。
 ここはやはり「東大に行ってのんびり4年間勉強するのではなく、さっさと弁護士になってオヤジみたいな人を救ってやるぜ」と、ベストとしてそれを選んだ事にすべきだったと思う。

 それぞれの心のつぶやきを描き、試験の緊張感を感じさせる演出はなかなか良かったが、それ以外のところで 2回ほど脱力させられたシーンが。案の定ワナだった双子弟の差し入れサンドイッチで食あたりを起こした双子兄。それを説明するのに、いくらなんでもカバンの中から、当然のように食べ終わって空になったサンドイッチの容器を取り出し、そのうえ消費期限を確認すると何の細工もなく10日前ってのはどうよ。
 また、合格発表での番号確認。「顔を映して、掲示板を映して」という全く同じ構成のシーンを人数分、さらに大差ないものを3セット行うってのは、いくらなんでもアイディア不足。緊張感を出そうという事なのだろうが、タイミングや構図も全く同じシーンが続くので、むしろ間延びしてしまっていた。

 矢島の手のケガなんてのはいいとして、汚い妨害工作までしてきた上にまんまと不合格だった双子弟との絡みが一切無いってのはなぁ。まあ、いまさら「兄貴、今までひどいこと言ってごめんな」「すごいわお兄ちゃん、それに比べて弟は!」なんていうトホホな展開を見せられても困るだけなので、そういう逆転劇があったのだろうと、勝手に想像しておく方が良いのかもしれない。(それよりも深い展開を描くには時間も、これまでの描写も足りないし)

 桜木の強烈な物言いで始まったこの作品を締めるのは、やはり桜木が自信満々に言い切るセリフ。「頑張ったから OK」という言い方ではなく、試験問題を引き合いに出して「答えがいくつもある人生においては、それも正解」という言葉を贈る桜木。教室での相変わらずのキツイ物言いとの落差もあって、なかなかうまくキマっていた。

 ところで、矢島たちは前期試験しか受験しないっていう設定か何かあったっけ。水野が試験に間に合わなかったシーンからずっと「後期試験に触れねーなぁ」と思って見ていたのだが、結局最後まで後期試験のコの字も出ずに終了。はて、どこかで何かを見落としたのが、オレなのか制作側なのか。

コメント(2)

Kaz.

2005年7月17日 23:23

> ちーずさん
> 阿部さんが演じる桜木先生がハマっていますね。

そうですね。尊大で自信満々な様子にシビれます。
阿部寛はなかなか役に恵まれていると思います。

今後も暴言とハッタリをかっこよく見せて欲しいです。

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ちーず

2005年7月17日 19:29

こんばんは。TBと記事のリンクありがとうございます。
阿部さんが演じる桜木先生がハマっていますね。
生徒たちも集まったし、いよいよ授業が始まります。
どんな授業になるのか楽しみです。

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