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弁護士のくず

2006年8月 8日 22:55 | コメント (0) | トラックバック (0)

基本情報

公式ページ  TBS 系列:木曜22時

 原作は井浦秀夫による同名コミック。裁判で勝つためならどんな手も使うという「弁護士のくず」九頭元人は、正義に燃える新米弁護士の武田真実と強引にコンビを組まされてしまう...

 出演は豊川悦司・伊藤英明・高島礼子・星野亜希・モト冬樹・北村総一朗ほか

概観

「裁判で勝つためならどんな手も使う」というキャッチフレーズに期待したが、中身はありがちな「ロクデナシっぽいキレ者」のパターン。なるほどと感心した法廷戦術はほとんどなく、一風変わった証拠集めの手段を「どんな手でも」と称したつもりなのか。

 中盤からは全体のテンポが良くなり、お約束の小ネタと生き生き動くキャラクターが楽しかったが、「このシーンここまで」や「出番多すぎ」「来週も見てね」「2年振りの連ドラなんだから相手は女優が良かったな」「僕だってほっぺの赤くないトヨエツが良かったですよ」といったメタなギャグは微妙。この手のネタを喜ぶ人は比較的多いし、何より作る側としてはラクだと思うが、回を追うごとに連発していくのは勘弁してほしかった。
 キャラクターのはっちゃけ具合だけで勝負してくれれば(しようとして、その部分にアイディアをかければ)、弁護自体が取るに足りないものでもコメディとしてアリだったのに。残念。

case. 1 踊るセクハラ裁判

日本の弁護士ドラマは、裁判をちょっとした演出に使った勧善懲悪人情モノがほとんどという鬼門なのでチェックしていなかったのだが、裁判で大事なのは勝つ事と言い切る九頭がなかなか面白そう。

 「裁判では勝ったけど実際は訴えるようなセクハラは無かったんだよ」というオチはこれまでと違う弁護士ドラマを予感させて良かったが、種明かしを裁判後にもってきて、さらにいい話につなげちゃうってのは物足りない。
 どうせなら、証言の都合の良い部分だけを利用して勝つという戦術(「部下の女性の胸を揉んだ、という話を聞かされた」という友人の証言で勝ったのだが、その時双方にある程度の同意があったという事実は隠している)をヤマにもってきて欲しかったところ。

 公式ページの「はじめに」で「裁判で勝つためならどんな手も使う」というフレーズを使うのなら、ここをもっとクローズアップすべきだと思う。
 「偽証はしてないよ。あそこで述べたのは紛れも無く事実。ただ、その他にも事実があったってだけ」なんてセリフをふてぶてしく九頭が言ったりするのが好みの展開なのだが、まあ一般受けはしないよな。

case. 2 ちょいワルおやじ vs 不良少女

ありゃりゃ、結局人情話に落ち着いてしまうのか。これじゃ単にクライアントが依頼時に無罪ではないというだけで、話の構造はいままでの弁護士モノと一緒だ。

 良く出来た定番やらベタってのはむしろ好きなのだが、「勝つためならなんでもやる弁護士」という思わせぶりなアオリ(公式 WEB より)で、こうもベタな説教物をやられると力が抜ける。

case. 3 美人作家の盗作

確かに現実的に考えれば、盗作されたと言ってサイン会に乱入した「電波受信中」なクライアントを信用するのは難しいのだが、フィクション的お約束でいくと正しいのは明らかなこの言い分をひたすら否定させられる伊藤英明が哀れ。

 つか「勝つためならなんでもやる」っつー公式ページの謳い文句はどうなってんだか。思わせぶりな手法はもちろん、まともに法廷シーンがあったのは初回だけ。
 今回の展開は法廷外の攻防と言えなくもないが、くずがズバリ真相を言い当てた根拠に乏しく(根拠云々というより、勝手な想像といったレベル)、それを巡るやりとりも肩すかしもの。

 主人公がワルぶっただけの、法廷が時々出てくる人情モノと捉えた方が良さそうだ。

case. 4 死者の声!冤罪の真犯人

ボビー・ドネル法律事務所言うところのプランB 発動。父親が真犯人ではなく、正にただただ他に目を向ける法廷戦術としてのプランBなら言う事無しなのだが、さすがにそこまで望むのは酷ってものか。

 ただ、「勝った方が正義」「お前はどっちの弁護士なんだ」というくずの台詞は、罪をなすりつけようとする相手が真犯人では焦点がボヤけまくってしまうのも事実。あの時点で父親が犯人である事にわずかながらでも確信を持っているなら、正義だのどっちの弁護士だのといった言葉を使わずに「だって父親が犯人っぽいんだもん」とだけ言えば済むこと。まあ、フィクションにおけるハッタリとして、あの時点でネタばらしする訳にはいかないので仕方が無いといったところか。

 結局法廷で真実を明らかにしただけなので、法廷戦術の悪どさ(?)としては、証言の都合の良い部分だけを利用して勝利した第1話に軍配が上がるのだが、その戦術に至るまでの見せ方は今回の方が良かった。

case. 5 私の父は九頭です!

好みではない....というか、むしろ嫌いな部類の話で、もう一方の認知問題を人情で解決するあたりはカンベンしてくれという感じなのだが、展開のツボはおさえられており物語としては悪くなかったように思う。ただ、このテのネタはヨソでやれ、ヨソで。

case. 6 痴漢!女性専用車両の秘密

自信満々に彼女達が知り合いだったことを指摘して追いつめようとする伊藤英明。しかし、彼女たちはそこに気づかれるのは承知の上でもうひとつ罠を張っていた。そこで颯爽と登場するは我らがくず先生! 哀れ伊藤英明今週もまたかませ犬だったのだ。

 .....という展開を予想して、意気揚々と裁判所に向かう伊藤英明を生暖かい目で見ていたのだが、おいおいそのまま勝っちゃうし。オーソドックスながら手堅い作りで、これまでで一番良かったとは思うが、こんな誰でも予想できるようなヒネりもクソもない展開で終わるエピソードは「作品紹介用」として1話か2話でさっさと終わらせて、6話ともなれば(くず本人も「もう6話も撮ってるのに」って言ってんだから)逆転勝利と思った地点がスタートになるような話を見せるべきだろう。

 また、法廷でゲイであることを告白するなんていう人情劇を入れるのなら、その前に「ゲイである事を証言すれば女性に痴漢するはずがない、と無罪になるはずだ」といった展開を入れた方が良かったと思う。(それっぽいものは僅かにあったが、あれじゃ弱すぎ)
 ゲイである事を告白すれば勝てる、しかし身の破滅だし現在の相手に迷惑がかかるからそれはできない.....この「告白すれば勝てるのに告白しない」という状況をきちんと描いたうえで、別の手段で勝ったにも関わらず仮面を脱ぎさるために告白すれば、よりクライアントの思いが鮮明に描かれただろう。

case. 7 不適切な遺産相続

高島礼子の誕生日を祝おうと慣れない高級レストランに誘い、昔の彼女(ではないらしいが)と鉢合わせした挙げ句バカ正直に40本のローソクを飾ったケーキを用意して怒らせるというベタなカラ回りっぷりを見せる伊藤英明がいい。

 本編は........まあなんというか普通。相手の答えを思うように誘導し、その言質をとってこちらに有利な証拠を確定させるという手法は良かったが、その後の展開がなんともベタ。(まあ、それを言ってしまえば「手法」自体も非常にベタではあるが)

 また、姑との衝突の原因が子供の卵アレルギーって展開は物語としての都合を強く感じてゲンナリ。「まさか、そんなもので?」と言われてしまうような珍しいアレルギーなら話は別だが、食物アレルギーと聞いて真っ先に思い浮かぶ卵アレルギーの説明を躊躇する必要がどこにある? つか、説明せずにおいて、知らずに食って(他人が食わせて)大変な事になったらどうするつもりなんだ。

 お約束となった展開をテンポよく挟み、それぞれの登場人物が生き生きと動いているので物語としてつまらなくはないのだが、残念ながら見終わった瞬間に内容を忘れてしまう感じ。「特命係長 只野仁」をやってたテレビ朝日・金曜23時枠を彷彿とさせる。まあ、それはそれで悪くないんだけど。

case. 8 名誉毀損!噂の女

本筋、小ネタともにテンポがよく面白かった。電話の録音テープを得るために、人情に訴えかけたり正論を語るのではなく「協力しないとあんたに被害が及ぶよ。そして協力すれば安心だよ」と、相手のメリットとデメリットをチラつかせる直球を迷いなく使うあたりが良かった。
 サブエピソードの娘のカンニング問題とクロスするのは定番だが、下手な演出や小細工をすることなく王道としてすっきりまとまっていた。

case. 9 夫婦三十年の追憶

アイロンでシャツが焦げて「しもたぁ」と、お約束のドジっぷりを見せた後は、泣けると噂の恋愛映画を見て劇場で号泣とこれまたベッタベタな展開を見せる伊藤英明がいい。

 熟年夫婦の離婚問題を主に描きつつ、その引き金となったリストラ騒動の裏を暴く展開。伏線の入れ具合も程よい感じで(好みとしてはもう少し隠して欲しいが)人情話とスカっとする逆転シーンがテンポよく配置されていた。
 「今の世の中、なんでもかんでも他人のせいにしないと生きていけない。その為に法律があるんです」と、冗談まじりに啖呵を切るくずがかっけー。

 ただ、その解明をくずの言葉だけでやっちゃうってのはちと惜しい。まあ、証拠やら何やらで相手を追いつめるよりも、主役がカッコ良くキメる方が多くの視聴者は喜ぶのだろう。

case. 10 名門大学生の犯罪

「冷やかしの言葉を言い終わらないうちに頭突きされた」という事実の「頭突き」に注目し、言葉での脅迫は無かったものの、極めてそれに近い状態だったことを証明する伊藤英明の尋問が良かった。
 ただ、被告人に難癖をつけてきた3人組が以前に同じ場所で強盗強姦を行っていたって展開はラクな方に逃げ過ぎかなぁ。このネタがあれば裁判的にも、それを見ている視聴者的にも納得しやすいのだが、それがない状態での弁護を見せてほしかった。

case. 11 働く妻 VS 専業主夫

ベタだなぁ。相変わらず騙され役な伊藤英明が哀れ。

 「この空間が撮影されたドラマであること」をネタにしたメタなギャグが中盤からちょこちょこと使われ、乱発気味なここ数話はなんだかなーという感じだったが、登場人物たちが次週の内容について長々と話し合うという今回のラストは薄ら寒かった。
 そういったネタはスパイス的にごく少量使うか、ひとアイディア加えてメタなネタであることに意味を持たせるのなら効果的だが(もしくは、有無を言わせないほどにメタなネタで埋め尽くすとか)、だらだらと垂れ流すと途端に滑稽になる。

case. 12 愛と金(最終回)

なにも前回、今回と似たようなネタ並べんでも。直接死を扱った案件以外で誰かの人生を左右することを描こうとするのは良いと思うが、「人が死ぬ事にビビってたら弁護士なんか続かねぇんだよ」へのもって行き方が随分と強引。

 事件を解決しつつの挫折と復活ってのは、さすがに1時間に詰め込むには無理がある内容で全ての展開が駆け足気味。各状況でのタメがほとんどなくダイジェストを見ているような気分だった。

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