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相棒:シーズン8

2010年2月 1日 00:08 | コメント (0) | トラックバック (0)

基本情報

今やテレビ朝日が最優先でプッシュする人気シリーズとなった刑事ドラマ「相棒」の第8シーズン。

 数々の事件を解決する切れ者ながら、上層部の痛い腹も平気で探る扱いにくさゆえ、窓際部署「警視庁特命係」に所属させられている杉下右京(水谷豊)。そんな杉下のマイペースぶりに、配属された部下もすぐに辞めてしまう状態が続いたなか、熱血直情型の亀山薫(寺脇康文)が特命係にやってきた。

 自分とはあまりに違う亀山に面食らいながらも、そのまっすぐさに何かを見た杉下は亀山とコンビで事件解決にあたる事となった。しばらく相棒として捜査を続けた二人だったが、ある事件で殺された友人の意志を継ぎ、亀山が警察官を辞めて東南アジアに旅立つ事で、その関係も終わりを迎えた。(シーズン7中盤での出来事)

 再び一人きりの特命係に戻りマイペースに仕事を続ける杉下だったが、そこに新たな部下、神戸尊(及川光博)が「杉下を見極めろ」との密命を受けやってくる。(シーズン7最終話)

シリーズ総観

 前シーズンの中盤で亀山を退場させ、しばらく単独捜査する杉下を描いた後、同シーズン最終話で神戸を登場させるという構成も上手かったが、神戸が本格的に登場する本シーズンも、なかなか手堅い交代劇となっていた。(ただし、「観客に受け入れられるように」という商品側面での構成の話で、亀山退場そのものの、物語的としての意味・位置づけは上手いとは言いがたい)
 もともとの、杉下の性格と物語の構成が、相方べったり・お互いがいなくては前に進まない類いの物ではない部分も大きいが、「杉下+神戸」から「杉下&神戸」に移って行く様が、ゆるやかなグラデーションで上手く描かれていた。

 小気味よくニヤリとするシナリオがこの作品の持ち味だと思うが、本シリーズでもそれは健在。犯人の愛憎であったり、捜査する側の感情や人間関係がクローズアップされる作品が多いなか、事件を追って話が転がる様子を純粋に楽しむ事ができた。
 シリーズが続くと、当然お約束の事柄が増えて来るが、必要以上にそれらを多用したり演出がエスカレートする事なく、悪いマンネリではなく、ならではの定番要素として加減良く使われていたあたりもうまい。
 また、今後も続けるシリーズとして位置づけているからであろうか、いつもならもっと出てきそうな、警察内部ネタ、官房長絡みの話をぐっと減らして、杉下と神戸に焦点を当て続けたシリーズ構成も良かった。

おすすめエピソードは第6・8・17・18 話

第1話 カナリアの娘

 新しい相棒である神戸と杉下がお互いをどう意識し、どう立ち回るかを、やや大げさめに紹介したエピソード。捜査方針・手順といった細かい部分だけでなく、事件全体の取り扱い・犯罪に対する価値観といったところの対比まで描くのは急ぎすぎな感もあるが、「ここに注目してね」というイントロダクションとしては分かりやすくて良かった。

 事件の方はシリーズを通して何度も描かれている、テロ集団「赤いカナリア」絡みのエピソード。赤いカナリア関連は話の風呂敷を無理やり広げるパターンが多く、いまひとつな印象があるので見始めはイヤ〜な感じがしたが、コンパクトにまとまっていて良かった。最後の「実はヒーローだったのでは」は蛇足か。

第2話 さよなら、バードランド

 前回も留守宅に無断侵入したり、マンションの大家に調べたい部屋の鍵を開けさせたりとやりたい放題で、今回も話を聞きに行った会社の机をあさるという、強引な捜査っぷりを見せる杉下。これまでのシリーズではむしろ、ゴリ押ししたい亀山が肩すかしを食らう搦め手を繰り出す場面が多かったので若干違和感が残る。
 今回のケースでは机を調べるための時間を神戸に作らせる流れなので、杉下の神戸に対する(君ならそれくらいの事ができるでしょう、という)評価を描く場面としてまあアリだと思うが、前回の無断侵入は2回とも神戸の存在とは無関係なものだった。
 品行方正な捜査をしてきた訳ではないし、目的の為には手段を選ばない人物でもあるので、「とにかくヘンだ」って程では無いが、日常的な捜査でこうも連発されると、ちょっと違うんでないとは思う。

 神戸が奥さんはグルじゃないってのに気づかないのもなぁ。杉下が推理を披露するための道化役としては仕方ないところだが、このレベルになると亀山くらいに単細胞(失礼)でないと無理がある。

第3話 ミス・グリーンの秘密

 肝心な部分をあえて外した聞き込みでモヤモヤとする相方に対して、「気になりますねぇ」と推理を披露する杉下というおなじみの図。昔より嬉しそうに見えるのは単に水谷豊の演技が大げさになっただけなのか、その方面では張り合いが無さ過ぎた亀山に比べ、神戸相手だと幾分楽しいのか。

 なんだかやけにドラマチック&ロマンチック。ミッチー神戸にはスカした台詞がよく似合う。

第4話 錯覚の殺人

 分かりやすさ優先ってのは理解しつつも、おそらく水色のシャツを着て撮影したであろう、再現 VTR の「鮮やかすぎる錯覚」に興ざめ。(シャツ以外の、黄色の背景を隠してもシャツは鮮やかな水色のまま。「先生の著書を参考に」と本を開いたシーンでは実際の錯覚画像が使われているため、黄色の部分を隠すと瞳はきっちりグレーに見える)
 ミもフタも無い事を言ってしまうと、黙々とカートを押す男がスタジオから出て来たとしたら、シャツの色が水色だろうが緑色だろうが、よほど変な行動をとらない限り「運送屋とかだろうな」と思うのが普通で(これも思い込みよる錯覚とも言える)、上に書いた大げさすぎる再現 VTR とあわせて「色なんてどーでもいいじゃん」と思ってしまった。犯人の専門が心理学であれば「適当な格好だった」なんて展開もアリだったろうか。

 第2話の感想にも書いたが、展開の都合上、神戸がおっちょこちょいに描かれているのが少し可哀想。勇み足で起承転結の「転」を呼び寄せても似合う亀山と違い、ちょっと無理やり感が漂う。もっとも、シリーズ終盤に今回と同じような展開で勇み足と思わせておいて、実はツーカーになった杉下との連携プレイってのを描く為の伏線なのかもしれない。

第5話 背信の徒花

 杉下がふと気になった出来事に足をつっこんだ結果、警視庁や官僚の痛い腹をつつく事になる、相棒では定番ともいえるエピソード。そんな訳で、導入から発展、最後の締めまでおなじみの展開だったが、それだけに手堅く安定した面白さがあった。
 バレバレとは言え、老人ホームの所長はもちっと善人に見える人をキャスティングした方が良かった気がする(ひどい)

第6話 フェンスの町で

 そうくるかー、と話の転がり方を楽しめた。杉下の推理がショートカットしすぎのような気もするが、1時間でコンパクトにまとめるには仕方無いだろう。ラストの感動チックな音楽は演出過多かなぁ。逆に淡々と回想を見せる方がグッとくると思う。

 杉下、神戸の双方の呼吸がだんだんと合って来たあたりのさじ加減がなかなかうまい。ところで、バレずに勝手に取り調べなんてできるのか。

第7話 鶏と牛刀

 前回に引き続き、杉下、神戸のやりあいがなかなか楽しかった。ただ、神戸の行動や反応が(でっち挙げ捜査を除いて)亀山とほぼコンパチなのが少し物足りない。また、犯人への憤りを露にする神戸を諌める杉下という構図は前の杉下・亀山コンビを思い出させるが、残念ながらいまひとつしっくりこなかった。

 「行った事がないはずのホテルの転落死に関して " 窓を開けて " ではなく " 窓を外して " と言った」.....このおっさんだと、どうつっこんでもボロを出しそうな気もするがちと乱暴な指摘。
 杉下は「普通自殺と聞けば " 窓を開けて " と思うのでは」と言っていたが、その前におっさんは「一緒に窓ガラスも落ちていた(という事を聞いた)」と言っているのだ。現場に窓ガラスが落ちていたというのに、窓を開けて飛び降りたと思うやつは、普通かどうかは置いといて、注意力、想像力が足りないことは確かだ。
 そもそも、杉下の指摘は「開かないという、そのホテルの窓の構造を知っていた」という部分に焦点が当てられているが、ある程度の階層以上のホテルで窓が(人が外に出られるほどには)開かないのはそう珍しい事ではなく、現場に窓ガラスが落ちていた事とあわせて考えれば、よほど動転している人間以外は「窓をどうにかしないと飛び降りる事ができない構造だった」と想像するのは自然だ。
 この部分を犯人指摘の出発点にするのが弱い事に変わりは無いが、「あなたは、死体と一緒に窓ガラスが落ちているという話を聞いて " ガラス破った、壊した " 等ではなく、真っ先に " 外した " と表現しました。確かに窓は、ガラスが壊されたのではなく枠ごと外されて.....」とつっこんだ方が幾分マシだったと思う。

 事件全体は相棒でちょくちょく出て来る社会風刺もの。杉下が官房長に皮肉を言って終わるのが定番だが、今回は珍しく(そういった状況で強い発言が可能な立場にいる)官房長自身が不正をした相手をケチョンケチョンにする締め。劇中でウェイトを持って描かれたのはあくまで「殺人」であるから、物語としてのカタルシスというより、なにやら思想的な臭いが強くなってしまっていた。

 今度はきちんと変装して杉下と官房長の会話を聞いていた、という神戸の台詞を聞いてそのシーンを見返してみたが残念ながら神戸らしき姿を見つけることはできなかった。視聴者に分かる程度だと杉下が気づくはずというジレンマがあるので仕方がないが、よく見るとそれらしき人物が一瞬だけ映るといったお遊びが欲しかった。神戸に超人的な聴力があるとは思えないし、杉下の後ろに座っていた髪の長い女性が彼の変装だろうか。やるな。

第8話 消えた乗客

 警察病院に収容された被害者が怪しいってネタは前にも無かったっけ......と思いながら見ていると物語は意外な方向へ進み、ゲーム「逆転裁判」を彷彿とさせる力技の逆転劇が2ターン。
 2つ目の逆転はかなり突飛で、正直そこだけを見ると苦笑してしまう内容ではあったが、「とにかく今回はひっくり返るんです」と言わんばかりの畳み掛けはなかなか面白かった。

第9話 仮釈放

 杉下が聞き込みをする際の、神戸のさりげない立ち位置の移動や表情の変化によって、二人の呼吸が細かく描かれていて良かった。もともと真綿で首を絞めるようなネチネチとした追いつめっぷりが杉下の得意技だが、神戸とコンビを組むようになってから、さらに容赦が無くなったような気がする。

 それにしても、やさぐれホステスを演じた井上和香が似合い過ぎ。

第10話 特命係、西へ!死体が握っていた数字と、消えた幻の茶器の謎...

 普段のエピソードでは、最後のどんでん返しとして犯人のバックグラウンドに注目するパターンが多いが、今回は謎の中心に神戸の元恋人が関わっていることもあって、終止「事件」ではなく「人物」中心に追って行く、昔ながらの2時間サスペンスのような構成。毎回こうだとちょっと困ってしまうが、正月スペシャルとしてのんびり見るにはなかなか良かった。

 ちょっとした部分だが、遥か昔の茶人・千利休が事件に絡むという突拍子もない展開に対して、視聴者が杉下に対して抱くであろうモヤモヤを、ちょうどいいタイミングで神戸に代弁させる流れがうまかった。

第11話 願い

 ここまで分かりやすいと、杉下にもう少し早く気づいて欲しかったところ。「世にも珍しい宝石を盗んだ泥棒、しかし彼が本当に欲しかったのは宝石を入れた箱の方だったのです」のパターンを、こうも続けてやるのもどうなんだ。

第12話 SPY

 今後の布石となりそうな「スパイがいるんじゃない?」エピソード。どいつもこいつもスパイ、あいつがこいつ探って、探られたそいつは別のあいつを探っている、という数珠つなぎがなかなか面白い。

 神戸が事件に絡むあたりは、てっきり話の導入&観客へのハッタリで済ませるのかと思ったので、ここで大きくクローズアップさせてしまう展開に少し驚いた。まあ、ここで掘り下げなくても、「哀れですねぇ、Sというのは」とわざわざ言う杉下は、核心は持てないまでも神戸を疑っているのだろう。

第13話 マジック

 冒頭のマジックショーの内容とステージのショボさは、もちっとどうにかならなかったのか。本編と全く関係無いなら予算をケチるのも止むなしとは思うが、ラストに「この世界の一番はオレ様」なんて事を言うやつのステージがこれってのはあんまりだ。「どこが大人気の天才マジシャンだ」というツッコミ待ちの、ドラマ「TRICK」冒頭の方が、まだマジックショーらしい雰囲気だ。

 肝心の脚本のほうもいまひとつで、話が次々に転がるというより、だらだらと後だしジャンケンを見せられているような印象だった。

第14話 堕ちた偶像

 本当は公害病の患者ではなく、自分の政治家生命を守りたかったのではないのか.....犯した罪をシンプルにして、「犯人」を「悪人」にするには、これが分かりやすいと思うが、本当に正義に燃えていたってのも面白かったような気はする。(まあ、謎解きも含めて1時間で描こうとしても消化不良なのでこれで正解だとは思う。犯人の人となりや犯行そのものに、明快な正義と悪で決着をつけない結末が珍しく無い、アメリカの TV ドラマであれば可能かもしれない)

 「暇か?」とコーヒーを飲みに来る角田刑事を交えて、世間話のように事件の全体像を整理し、時に推理するのがいつものパターンだが、今回は珍しく、杉下と神戸の2人がガッツリと推理を交わしていた。また、具体的な容疑者自体がいなかったため、おなじみの一課のトリオが的外れな捜査でテンテコマイする様子や、取調室に乱入するするシーンも無く、冒頭に出て来ただけで退場。
 両者とも、登場時間自体は普段でもわずかなものだが、それぞれ要所のアクセントになっていたので、それが無い今回はやや単調な印象があった。

第15話 狙われた刑事

 杉下・神戸・伊丹の三人が机を囲んで推理を交わすシーンが非常に新鮮。ごく短いシーンだが、妙にハマっていてドキドキしてしまった。神戸が伊丹についた嘘を見破る杉下は、たぶんそれを語った時の状況も想像ついているんだろうな。

第16話 隠されていた顔

 神戸がサブリミナル効果による詳細な誘導をがっつり信用してしまうのは、展開の都合上仕方ないとはいえ、やっぱりなんだかなぁ。配役で犯人がバレバレなのが勿体ないが、犯人は誰、犯行方法は何、どうやって立件する、といった色々な視点がうまく転がる様子がコンパクトにまとまった展開は、なかなか面白かった。
 第14話に引き続き、がっつりと推理を交わす杉下と神戸。順を追って論理を展開する神戸に、補足の相づちを入れる杉下ってオイ、仲良すぎじゃねーか。

 それにしても、相棒世界のパソコンは徹底して Mac だな。クレジットにアップルの名前は無いから、制作者の趣味なのかな。(Panasonic や yano 等は「システムサポート」として、そのほか衣装協力として数多くの会社がクレジットされているので、Mac もタイアップ使用であればクレジットされているだろう)

第17話 怪しい隣人

 なかなか面白い話だったが、杉下がハンカチを持って行った先のおじさんが名のある俳優であった事(このおじさんも、大きく話に関わって来る)と、空き巣が、空き家だと思って侵入した(目的はその家ではないか、少なくとも普通の空き巣ではない)という展開で、早々に結末が読めてしまったのが惜しい。
 惜しい、ではなくあえて、という気もするが、せっかくなので隠すパターンが見たかった。

第18話 右京、風邪をひく

 刑事の勘で颯爽と事件を解決した伊丹。そこから時間を巻き戻して、次第に出来事の真相を見せて行く面白い趣向。巻き戻る毎に場面場面にディテールを加え、当初は意味不明 or 取るに足りなかったシーンの後ろで起きていた「関連」を浮かび上がらせる構成が楽しい。

最終話 神の憂鬱

 警備部時代のプロジェクト半ば、突然特命係への異動を命じられていたという神戸の過去。いやいや、その流れで自分の申し入れが了承されていたと考えていたなら、頭の中がお花畑すぎるだろミッチー。
 てっきり、今シーズンでは真相までは語られないと思っていた神戸の異動にまつわる話が、最終目的も含めて描かれたのにはびっくり。

 カメラによる大規模な監視を「すべてを見渡す神の視点」に見立て、当事者が全能感を持ったり、随分なタイトルがつけられたりしているが、ちょっと大げさな印象。可能性の話としては、確かにそういった凄さを秘めたシステムだとは思うが、インターネットを初めて体験して「スゲー」と驚いている小中学生とほとんど変わらない。

 杉下は、既に2人の命を奪っている事もあって、システムの存在に否定的なようだけど、男を追いつめるのに、今回のテストで入手した映像をちゃっかり使ってるんだよね。

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