ヨツバグループ
2009年1月31日 10:24 | コメント (0) | トラックバック (0)
全ては彼の手の上で(コミックス第5・6・7巻)
DEATH NOTE を所有している間の記憶を無くしたライトは、その正義感からキラを捕らえるために積極的に捜査に参加する。そしてライトは、キラによる殺人を含むと思われる人死によって短期間で利益を得た企業・ヨツバグループを発見する。松田刑事の危険な単独捜査が偶然にも功を奏し、エルたちはヨツバグループで秘密会議を行っていた8人の中にキラ本人、もしくはキラと連絡を取る事ができる人物がいる確信を持つ。
会議の議題として淡々と殺害ターゲットを決めるヨツバグループの7人を前に、被害者が出る前に全員逮捕しようと考えるライトたちと、キラを特定して本人を捕らえないと意味がないと考えるエルは、捜査方針の違いから一時的に共同捜査を解除する。エルは言葉巧みにミサを協力者として引き込み、7人の誰がキラであるかを確かめる作戦を実行する.....
解答がふせられた謎
これまで読者は、登場人物たちが悩む問題の答えを全て知らされていたが、ここにきて初めて正解がふせられたまま物語が進む。ヨツバグループに謎のキラと、画面に登場するものは以前と変わったが、読み合いと探り合い、状況判断と推理で魅せるという作品の基本は変わっていない。以前のように読者が答えを知り登場人物による推理を楽しむパートと、読者も一緒に考えて推理を楽しむパートが程よいバランスで同時進行するのが楽しい。
ただ、正解が分かった後に頭から読み返すと伏線の存在に気づくといった趣向はほとんど無く、思わせぶりなミスディレクションが多く見られるといったあたりはご愛嬌。
翻弄される小悪党
キラの正体が火口だと判明してからは、気づかれない大きさの檻で火口を取り囲み、徐々にその檻を小さくして身動きをとれなくさせる様子が克明に描かれていた。手のひらで転がされるがごとく、エルとライトが予想した通りに右往左往する火口は、小悪党ぶりを感じさせてなんとも哀れ。
次々と想定通りの行動を起こす中、芸能プロダクションに履歴書を見に行っても本名を残していないんじゃないか、と火口が疑問を持つ「僅かな脱線」を入れるのもうまい。エルとキラの天才性を見せるには想定通りに事を運ぶのが大切だが、あまりにうまく行き過ぎるとそこに作者のしたり顔が透けて見えてしまう。結局はレムに説得されて想像通りの道に戻るのだが、これがあることによって火口が作者の意図によって動かされているのではなく、自分の意志で動いているということを感じさせていた。
やや強引なカーチェイスと、真骨頂のクライマックス
しかし、テレビ局での銃撃戦とフルスモークパトカーとのカーチェイス、ヘリコプターの出動という確保劇はベタなハリウッド映画然としてしまっており、分かりやすい盛り上がり感はあるものの、この作品のクライマックスにはふさわしくないと感じた。
何より気になったのがエル自らが現場に向かうという流れである。これはおそらくクライマックスとしての演出以上に、現場でライトが DEATH NOTE に触れなくては話が進まないというシナリオ上の都合が大きいだろう。
しかし、ごく限られた人間にしか姿を見せず、これまでいくつもの事件に関わりながら正体不明だったというエルが、こうも簡単に現場に出向くという展開には違和感を覚え、やはりそこに作者の都合というものを感じてしまう。以前エル本人が語ったように今回の事件が特別である為に現場に出てきたと言えなくもないが、こんな事をしていたら正体なんてすぐにバレると思うのだが。
そんなアクションシーンは別にして、「計画通り」とライトが邪悪に微笑み、その計画が語られてからの展開はこの作品の真骨頂。回想で描かれるライトの鮮やかな計画、口に出す言葉とは裏腹に相手を探り続けるエルとライト、長い40秒を経てついに目的のひとつを達成するライトと、静かだがしかし、緊張感に溢れたシーンが展開された。
キャラクターの厚みを増す演出
全体的な感想とは別に感心したシーンは次の2つ。まず、ヨツバの7人を逮捕すべきか否かで決定的に捜査方針が分かれた際に、エルが淡々と「あなたがたは好きなように、私は私が思うように」という対応を取ったこと。これはどちらの方針にも相応の理由があり、簡単にどちらか一方だけが正しく、もう一方は間違っていると言えるものではない。
どこまで議論しても平行線をたどることが予想できるレベルの意見の相違が生じた場合、その妥協点を見つけるのはかなり難しい。そんな状況で、どうやってまとめ上げるかに時間をかける事なく、まとめあげる事そのものを放棄するという判断は非常に合理的で、エルの有能さと冷静さを物語っていた。
一般的な価値観はもちろん、フィクションでは「協力する=いいこと」とされる場合が多く、説得なり妥協なり、そして時には強引に意見を集約させることが多いが、こうした決別もひとつの選択肢である。
次に、記憶を無くしたライトが、かつてのキラと現在のキラを比較し、かつてのキラの考え方が恐ろしいまでに自分と重なることに気づくという展開。このシーンは単純にライトの推理力を見せるだけでなく、犯罪者の粛正という危険な思想の中にある、ライトの確固たる信念を読者に語っている。実際に粛正を行う際にライト自身に演説させて語ることもできるが、今回の見せ方はそれよりも遥かにスマートだ。
ヨツバ編、真の見所
だが、このヨツバ編での一番の見所はなんといっても、捜査が重要な局面を迎える場面でもなお会話中に罠を仕掛けてくるエルに対し、ライトが「(この僕が)殺人犯になると思うか? そんな人間に見えるのか?」と真剣に問いかける場面だろう。
見開きを使った大ゴマでライトの真剣な表情を描き、お互いを見つめ合う瞳のアップにつなげるその演出は、通常の流れで行けばエルがホロリと涙を流し「すまなかった」と友情を確かめ合う感動のシーンである。
しかし、相変わらずの無表情で「思います見えます」と即答するエルと、半ば予想通りとそれを受け止めるライト、その後ろであんぐりと口を開けた夜神刑事という図は最高のギャグだ。加えてページを開くと一転、拳と足が飛び交い、5巻の殴り合いが前フリになっているあたりもうまい。
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