R.O.D : OVA 全3巻
2005年1月20日 17:30 | コメント (0) | トラックバック (0)
基本情報
倉田英之著のファンタジー小説を全3巻で OVA 化したもの。紙を自在に操る「紙使い」として大英図書館特殊工作部に所属するエージェント、読子・リードマンが主人公。本作ではアメリカ議会図書館から盗まれた大量の稀覯本を取り戻す命を受け、二人のパートナーと共に奪還に向かう。
シリーズ総観
原作の小説も未読で、紙使いが何なのかも知らないまま「面白いらしい」という噂を聞いて見た作品。とにかく全ての描写が丁寧ですんなりと話に乗れる構成が素晴らしい。話の大筋はシンプルで分かりやすく、それでいて各シーンには様々なアイディアが凝らされており見ていて素直に楽しむ事ができる。バラエティ豊かで派手な紙使いアクションは、原理の説明等が一切無いにも関わらず妙な説得力を持って描かれている。全3巻という長さを過不足無く使い、ツボを押さえた描写で世界とキャラクターの存在感をきっちり見せてくれる良作。
各エピソードの感想は内容に触れますのでご注意ください
第一巻 読子さん、事件ですよ。
本まみれの部屋....というか家....から本を買う為だけに外出し、次々に書店をハシゴして本を買い漁った挙げ句、妖しげな秘密書店で購入した20万円の古書を胸に抱いて息を荒くする読子のビブリオマニアぶりが楽しい。
いきなり現れた怪人に本を奪われるも紙使いの能力を駆使して取り返す。騒ぎが収まってほっとしていると知り合いらしき男が現れ、読子が本を取り戻した事を知ると「世界の危機だ」と告げてついてくるように命じる。
冒頭からここまでの一連の流れは、説明的なセリフやシーンを無駄に挟む事無く、読子の性格や紙使いという能力、知り合いらしき男との関係や二人が所属する組織のスケールといったものをすっきりと示してくれる。その一方で「先日研究所から奪われた偉人の遺伝子を使って生み出されたクローンがアメリカ議会図書館から稀覯本600冊を強奪した」という事件の概要はスライド入りで丁寧に紹介する。
作中世界で既に事実となっている事(読子の性格や能力)は言葉でなく絵として見せ、今回新たに起こった出来事は主人公に向けてという形で丁寧に説明。この使い分けは全巻通して徹底されており、自然な描写と分かりやすさという要素を両立させる事に成功している。
読子から本を奪い、エンジン付きのグライダーでニューヨークの大空を逃げるリリエンタールを巨大な紙飛行機で追いかけるアクションシーンも見応えがあった。自由自在な形状変化や弾丸をも受け止める防御力といった紙使いの能力を効果的に見せると共に、最後は相手に取り付けた紙のフックで自由の女神像に巻き取るという作戦で、正に紙使いの名に恥じない戦いぶりだった。
全編通して画面レイアウトや音楽の使い方が素晴らしく、クライマックスのアクションだけでなく1本通して何度も見返す事ができるクオリティに仕上がっている。それにしても、エレキテルマシン(?)を背負い電気を武器にする平賀源内と大空を滑空するリリエンタールはいいとして、冒頭で読子から本を奪おうと巨大バッタに乗っていた男がファーブルってのには笑った。昆虫つながりってだけで、彼は単なる学者だろうに。
第二巻 読子さん、インドですよ。
今回の敵は三蔵法師。孫悟空の如意棒と筋斗雲を操り猪八戒の火遁能力を持つ。モーゼの如く三蔵法師が法力で真っ二つに割った川の底で繰り広げられるバトルはそれ自体も迫力があったが、瀕死の相手に本を奪われ、倒れたナンシーを抱えて潜水艦に逃げるという決着後のシーンの緊迫感が良かった。
3話トータルにおける話の筋を見せる事がメインなため、派手なアクションは前述のシーンのみだったが伏線の張り方の上手さが際立った。また、本部で調査・指示を行うジョーカーやその組織の描き方も丁寧で話に厚みを加えていた。
ナンシーが敵のスパイと分かり、確保を命じるジョーカーと素早く銃を向けるドレイク。にわかには信じられずドレイクの構えた銃の前に立ちはだかる読子だが、その後頭部にナンシーが銃を突き付ける。この辺りはだらだらと描くと途端につまらなくなるが、お人好しな読子の行動を挟んで、情に左右されないそれぞれの行動をバババと一瞬で見せるため、スピード感に溢れ、さらに各キャラクタの性格を際立たせるシーンとなっている。
偉人軍団の目的が人類の間引きと分かり、稀覯本奪還作戦から偉人軍団殲滅作戦に移行する大英図書館特殊工作部。このあたりの流れも細かく丁寧に描かれており、作戦に士気上がる本部職員同様見ているこっちも盛り上がる。第一巻同様、全編隅々まで計算の行き届いた作りで繰り返し見ても楽しい。
第三巻 読子さん、ピンチですよ。
偉人軍団首領の一休が考えた間引きの方法とは、人類を一瞬で労力無く淘汰する「自殺交響曲」による選別。成層圏にロケットを打ち上げそこから特殊電波で交響曲を全世界へ向け発信する。
ナンシーにはクローン技術により作られた別人がいたようで、前回ラストで読子に銃をつきつけたのはそちら側だった模様。敵に捕まり、紙使いの能力を封じる為に手持ちの紙を全て燃やされた上に水責めにあう読子だが、その窮地を救うのが以前ナンシー(仲良くなった方)が読子の髪を三つ編みをした時の、リボン代わりの紙というのが上手い。
ロケットの発射をカウントダウン残り1で止めて喜ぶ本部だが、「これもとんちだ」と一休は取り出したタイマーをカチリと1目盛り動かし飛び立ってしまう。そんなんアリかよー、という視聴者の気持ちを代弁する工作部見習いウェンディの「ずるだー」のセリフがおかしい。(別段とんちでない気もするが、ずるである事は確かだ)
一休と決着をつけたのは読子ではなくナンシー。これは第二巻でナンシーが読子に対して自問するかのように尋ねた「上手く行かない本当の恋と、幸せなんだけと作り物の恋のどっちがいい?」という問いかけの答えにもなっている。
共に脱出しようという読子を見送り、一人ロケットに残るのはお決まりのパターンだが、そこに初めて出会った時の握手のエピソードを絡めてくるのは上手い。ただ、分かりやすさ優先なのだろうが、ナンシーの手を握って「絶対に離さないでくださいね」と念を押す読子は、まるでネタ振りをするお笑い芸人のようで苦笑してしまった。いきますよというセリフとギュっと握りしめた手のアップくらいで良かった気がする。
クライマックスからエピローグへの流れもオーソドックスながら綺麗にまとまっていた。ただ、一休が偉人軍団のボスならその一休を甦らせたのは誰? という疑問は残る。(小説でその辺りが描かれているのだろうか。後日注:R.O.D -THE TV- で語られている)
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